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第11回天文宇宙検定 受験者データおよび講評

○第11回天文宇宙検定(2021年7月4日開催)

※2・3・4級のみ実施

●最年少受験者
2級 9歳
3級 7歳
4級 7歳

●最高齢受験者
2級 80歳
3級 71歳
4級 68歳
※年齢は受験申込時に受験者本人様に提出いただいた情報によります

●受験者男女比率
2級:男性 70.9%、女性 29.1%
3級:男性 55.4%、女性 44.6%
4級:男性 52.8%、女性 47.2%

●合格率
2級:46.7%
3級:81.1%
4級:78.5%

●最高得点
2級:96点
3級:99点
4級:91点

●平均点
2級:65.7点
3級:72.3点
4級:70.1点

〇第11回天文宇宙検定講評

2021年7月4日(日)開催の第11回試験もコロナ禍での開催となりましたが、例年と変わらず幅広い年代の方々に参加いただきました。第10回試験と同様に、受験された皆様には検温や会場での私語を控えていただく等のご協力をいただき、また、体調に不安のある方には参加をお見送りいただく等のご配慮もいただきましたおかげで、つつがなく無事に検定試験を終えることができました。
また、初の年2回試験開催の第1回目として7月の開催となりましたが、準備期間が短かったにもかかわらず平均点が大きく下がることもなく、受験者の皆さまの日ごろの努力の成果が認められる試験となりました。
ご参加いただいた受験者の皆様、試験監督官をお引き受けいただいたスタッフの皆様、変わらぬご支援をいただいた協賛・協力団体の皆様に、この場を借りてあらためて心より御礼申し上げます。
以下に、第11回試験の講評文を掲載いたします。解答速報と併せてご覧ください(第11回解答速報の公開は終了しました)

■4級

今回も10代未満・10代の若年層が4級受験者に占める割合は、相変わらず高く5割を超えた(55.5%)。
合格率についてみると前回(85.6%)より、やや下がり78.5%。世代別でみると、60代:83.3%、50代:100%、40代:90.0%、30代:91.7%、20代:88.2%と大人世代は前回とほぼ同様に高い合格率を維持している。若年層では、10代未満は75.0%(前回より2.4%増)と健闘したが、10代では65.4%(前回より18.6%減)と、10代の合格率が前回より下回ってしまったことが全体の合格率に響いたようだ。今回は前回の試験から7カ月後の7月上旬の開催だったので、学校の勉強・試験との両立が難しかったことが覗える。
正答率が高かった問題のうち、正答率が90%を超えたのは次の5問。【問29】月の特徴について問う問題(正答率97.9%)、【問8】地球がどの天体の種類にあてはまるかを問う問題(正答率95.8%)、【問33】銀河の写真がどれかを問う問題(正答率95.1%)、【問16】月と地球の重力の違いを問う問題(正答率90.3%)【問21】「はやぶさ2」がサンプルを取ってきた小惑星の名前を問う問題(正答率90.3%)。いずれも、定番問題や話題になっている天体について問う問題の正答率が高い。
正答率が低かった問題のうち、正答率が4割以下だったのは次の4問。【問11】ガリレオ衛星の中で水星とほぼ同じ大きさの衛星はどれかを問う問題(正答率11.8%)。少しひねった問題で苦戦したようだ。ガリレオ衛星の名前だけでなく、各々の特徴もおさえておこう。次に正答率が低かったのは【問2】現在、月にないものを問う問題(正答率21.5%)。②の大気を選んだ受験者が63.2%と圧倒的に多かった。月にはごく薄い大気があることを覚えておこう。次に正答率が低かったのは【問35】一番速度が速いものを問う問題(正答率31.3%)。地球は時速約10万8000kmという猛スピードで太陽のまわりを回っている。もう一度距離や速度についておさらいしておこう。【問36】月の中心にあるものは何かを問う問題(正答率34.0%)。月の問題は、問29のように高い正答率のものがある反面、問2、問36のように正答率が低い問題も散見される。テキストを暗記するだけでなく、基礎的な知識にさらなる積み重ねとして、意識的に様々な情報を掘り下げていくことをお勧めしたい。

■3級

いつも幅広い年齢層が受験しているが、今回は20代以下の受験者が6割近く(57.6%)占めている。ただ30代の受験者が8.6%(前回より6.7%減少)と少なかった。平均点は72.3点、合格率は81.1%(前回79.0%)と高い水準を維持している。
合格率を世代別でみると、70代:100.0%、60代:92.3%、50代:78.9%、40代:69.2%、30代:86.7%、20代:90.2%、10代:78.4%、10歳未満:66.7%であった。
正答率が高かった問題のうち、正答率が90%を超えたのは次の5問。【問14】太陽系が天の川銀河のどの位置にあるかを問う問題(正答率96.0%)、【問47】本初子午線となったのはどこを通る子午線かを問う問題(正答率94.9%)、【問9】太陽を表す天文符号を問う問題(正答率93.1%)、【問30】これまでに太陽系は天の川銀河を何周しているか問う問題(正答率93.1%)【問11】地球の自転の向きを問う問題(正答率90.9%)。定番・暗記問題の正答率が高いが、天の川銀河と太陽系との関係を問う問題が2問も上位に入ったのは喜ばしい。
正答率が低かった問題のうち、正答率が4割を切った問題は次の5問。【問33】「地球」という言葉を最初に使った人物を問う問題(正答率8.6%)、56.0%の受験者が④本木良永を選んだ。彼は「惑星」という言葉を訳出したとされる(なお、2017~2018年版公式テキストまでは、本木良永が「地球」という言葉をつくったとされると記述があったが、2019~2020年版公式テキストからマテオリッチに改められている)。次に正答率が低かったのは【問60】図から成層圏の領域を問う問題(正答率30.9%)。50.3%の受験者が②の中間圏を選んでいる。次に正答率が低かったのは【問44】月齢6程度の月と月食中の月との違いを問う問題(正答率35.4%)。月食は太陽がつくり出す地球の影に月が入る現象であるが、地球の大気によって欠けている部分との境界はぼんやりとしている。月食はよく見られる現象なので、実際に観望会などで確かめてみるとよいだろう。次に【問57】星座絵の銅版画の図が誰の観測結果に基づいて作られたかを問う問題(正答率36.0%)。【問53】小惑星番号に登録されている天体の数を問う問題(正答率37.7%)と続く。
天文学・宇宙開発は日進月歩である。天文・宇宙に関する最新ニュースにも関心を向け、知識をアップデートしていくことを心掛けることが必要であろう。

■2級

第9回試験より、2級の受験者数が3級を上回るようになったが、今年もさらに2級受験者数の割合が増加した。20代の受験者が28.2%と最も多いが、10代(19.8%)に次いで、例年50代の受験者も比較的多い(15.0%)のが2級の特徴だ。
合格率は46.7%で、第6回(63.8%)、第1回(56.4%)に次ぐ高さだった。世代別で見ると、80代以上、70代はそれぞれ100%、60代:52.4%、50代:55.9%、40代:42.9%、30代:57.1%、20代:43.8%、10代:31.1%、10代未満:50.0%(ただし、80代以上と10代未満の受験者数の割合はそれぞれ全体の1%未満)である。なお、今回は80点以上の高得点を取った方が全体の2割を超えた(前回は14%)。
正答率が90%を超えたのは次の3問。【問11】初期の宇宙が急膨張した様子の呼称を問う問題(正答率97.4%)、【問22】X線で撮影された太陽の画像を選ぶ問題(93.0%)、【問3】最も早く形成されたと考えられる惑星を選ぶ問題(91.6%)。また、【問4】HR図中の恒星のグループについての説明のうち間違っているものを選ぶ問題(87.7%)と【問44】天体の色と温度についての説明で間違っているものを選ぶ問題(87.2%)も定番問題で、正答率が高かった。
正答率が最も低かった問題は【問57】記録に残る日本最初の天体観望会において観望されなかった天体を選ぶ問題(正答率8.4%)。①太陽の黒点、③木星の衛星を選んでしまった方が多かった。次いで【問38】海王星が発見される過程の説明として間違っているものを選ぶ問題(23.3%)。理論的予測に基づく海王星の発見は、何名かの人物が関わったため難しかったのか、解答は分散していた。以下、【問14】恒星のスペクトル型に関する正しい説明を選ぶ問題(28.6%)、【問31】こと座環状星雲の図中のスケールを問う問題(29.1%)と続く。解答が大きく二つに割れたのが【問15】太陽質量の0.2倍の星の進化の正しい道筋を選ぶ問題(49.3%)。③の太陽質量の0.46~8倍の天体の進化過程を選んだ方も多かった(40.5%)。星の進化についての問題は頻出されるのでしっかり復習しよう。
2級は3、4級に比べて難易度がかなり上がり、応用問題でつまずく受験者も少なくないが、隅々までテキストを読み込めば合格ラインに届くはずである。当検定も第11回を数え、これまで出題されたことのある問題の類題が増えてきている。過去問題も掲載している問題集をぜひ活用していただきたい。

■総括

今年もコロナ禍の中での開催でしたが、あまり外出ができない分、本検定に向けて公式テキストの勉強ははかどったでしょうか。また公式テキストの内容や受検自体を愉しんでいただけたでしょうか。学んだ知識そのものも重要ですが、学ぶ過程や理解する瞬間こそ何よりもの歓びではないかと思います。さらには、観て面白かった映画の話をするように、自分が得た知識や理解を、他の人に伝え共有するのも嬉しいものです。本検定も11回目を迎え、最初のころに受検された小学生の人は大学生や社会人になっているでしょう。感慨深いものがありますが、まだ天文や宇宙への関心を抱き続けてくれているでしょうか。今回、本検定を受検されたみなさんも、運悪く不合格だった場合はもちろん、合格された場合も、そこで終わらずに、もっともっと前へ横へ奥へと知識の地平を広げていって欲しいと思います。

2021年12月吉日
天文宇宙検定委員会

第12回試験問題へのご質問に対する回答

第12回の試験問題について、ご質問をお寄せいただき有難うございました。
以下に、お寄せいただいたご質問・ご意見について回答申し上げます。

●2級問1について
【問題文】
ブラックホールに吸い込まれた物質はどうなると考えられているか。

①内部にとどまる
②一部はジェットとして吹き出す
③ワームホールを経由して別の場所に出現する
④ブラックホールの分裂(増殖)に使われる

【正答】
①内部にとどまる

【解説】
物質を吸い込むとブラックホールの質量は増加すると考えられており、吸い込まれた物質は何らかの状態で内部にとどまっていると考えられている。一方、ブラックホール天体からはしばしばジェットが吹き出しているが、これはブラックホールに吸い込まれ損ねた物質が吹き出しているもので、決して、内部から出てきたものではない。また、ワームホールは理論上は存在する可能性があるが、ブラックホールとは時空構造が異なっており、ブラックホールを2つ繋げたものがワームホールになるわけではない。なお、ブラックホールが分裂することはありえないと考えられている。

【質問】
こちらの問題文でブラックホールと書かれた部分はどこまでの範囲を示すものなのでしょうか? 問題文にブラックホールの中(事象の地平線を超えて)等と書かれていればある程度わかりますが、今回の問題文では単純にブラックホールとしか書かれていませんでしたので。

【回答】
2級公式テキストp.14に書かれているように、ブラックホールは、「(その内部からは光が脱出できなくなる)事象の地平面と呼ばれる球状の境界面で囲まれている。」という天体です。すなわち、事象の地平面の内部がブラックホールで、事象の地平面の外部はブラックホールではなくブラックホールの外ということになります。

●2級問21について
【問題文】
宇宙が生まれてから40万年後頃に起こった出来事は何か。
①最初の星の誕生
②宇宙の晴れ上がり
③宇宙の再電離
④特記すべきことは起こっていない

【正答】
②宇宙の晴れ上がり

【解説】
宇宙が誕生してから約38万年後に、陽子と電子が結合して水素原子となり、プラズマ状態(電離状態)の水素が中性状態の水素となった。その結果、それまで電離した電子(自由電子)と衝突して直進できなかった光子が直進できるようになった。これを宇宙の晴れ上がりという。その後、約2億年頃に、最初の星が誕生して、ほぼ同時期に、宇宙の再電離が起こった。

【質問】
天文宇宙検定2級公式テキストには「38万年頃」という記載しかないのに、「40万年頃」という問題文の表記はおかしいのではないでしょうか? 他のテキスト等では40万年という表記を行なっているのかもしれませんが…。
さらに、選択肢④「特記すべきことは起こっていない」という表現はかなり意地悪な問題だと思います。(質問文の内容は、一部改変および省略しております)

【回答】
まずは、当問題文の数値について、受験者の皆様に混乱を招いた点をお詫びします。
本検定の試験問題は公式テキストの記載に合わせるようチェックを行っておりますが、概算で数値を丸めることは天文学の世界ではよくあるため、当該問題の数値については見過ごされてしまいました。概算や桁丸めを承知して天文の世界に臨むと、より広がりをもってとらえられる点はご理解いただきたいところです。しかし、ご指摘いただきましたとおり、公式テキスト記載の数値「38万年頃」に合わせる配慮がなされるべきでした。
なお、選択肢④「特記すべきことは起こっていない」につきましても、公式テキストp.13の記載のとおり宇宙が生まれてから38万年後頃に宇宙の晴れ上がりが起これば、その2万年後の40万年後頃には「特記すべきことは起こっていない」と解釈できることから、②と④を正答といたします。

●2級問23について

【質問】
選択肢には「=」が必要なのではないか?

【回答】
天文宇宙検定では、複数の組み合わせで選択肢を記述する場合、
ア:〇〇 イ:△△
のように表記しています。アが〇〇、イが△△という意味です。
今回は語句ではなく数式でしたが、同様の表記で

と表記しています。これは、

で、

という意味で「:」を使用しています。

 

●1級問13について
【問題文】
日本の次世代ロケットH3の主な特徴はどれか。
①再使用型である
②段数を増やして効率化をはかる
③スペースプレーンを搭載している
④まだ策定中ではっきり決まっていない

【正答】
①再使用型である

【解説】
次世代の国産基幹ロケットH3は、従来は使い捨てだった一段目を、姿勢制御などで再着陸させて再利用する方向で開発が進んでいる。その結果、打ち上げ費用が100億円かかっていたH2Aに対し、25億円程度に大幅減できると期待されている。さらに2段目も再利用すれば、5億円程度になると予想されている。打ち上げ費用を大幅に下げることで、国際的な競争力を高め、世界の宇宙市場へ挑戦しようとしている。

【質問】
H3ロケットが「再使用型」というのは間違いではないか。

【回答】
ご指摘いただきましたとおり、1級問13の選択肢①に不備がございました。
H3ロケットが「再使用型である」のは間違いであり、選択肢の中に正答がありませんでした。
そのため、当該設問につきましては、受験者全員を正解といたします。
受験者の皆さまにはご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。
試験問題の確認体制をさらに強化し、再発防止に努めてまいります。

○第10回天文宇宙検定受験者データおよび講評

○第10回天文宇宙検定(2020年11月22日開催)


●最年少受験者

1級 10歳
2級 8歳
3級 6歳
4級 5歳

●最高齢受験者

1級 73歳
2級 82歳
3級 87歳
4級 76歳

※年齢は受験申込時に受験者本人様に提出いただいた情報によります

●受験者男女比率

1級:男性 82.0%、女性 18.0%
2級:男性 66.4%、女性 33.6%
3級:男性 53.6%、女性 46.4%
4級:男性 49.9%、女性 50.1%

●合格率

1級:1.0%
2級:36.2%
3級:79.0%
4級:85.6%

●最高得点

1級:77点
2級:96点
3級:96点
4級:100点

●平均点

1級:46.0点
2級:62.7点
3級:70.2点
4級:74.6点

〇第10回天文宇宙検定講評

2020年11月22日(日)開催の第10回試験は、コロナ禍での開催となりましたが、例年と変わらず多くの方々に参加いただきました。受験された皆様には、検温や会場での私語を控えていただく等のご協力をいただき、また、体調に不安のある方には参加をお見送りいただく等のご配慮もいただきましたおかげで、つつがなく無事に検定試験を終えることができました。
参加いただいた受験者の皆様、試験監督官をお引き受けいただいたスタッフの皆様、変わらぬご支援をいただいた協賛・協力団体の皆様に、この場を借りてあらためて心より御礼申し上げます。
以下に、第10回試験の講評文をアップします。解答速報と併せてご覧ください。(第10回解答速報の公開は終了しました)

■4級

4級受験者数は前年より微減。今回は、合格率85.6%、平均点74.6点であり、この数年間で最も高かったが、試験後に受験者からの指摘を受けて全員正解とした問題が2問あったことの影響も否めない。最高点は前回に続いて全問正解者が出ている。受験者を年齢層からみると10代以下の若年層が47.8%を占めており、昨年に引き続き5歳での最年少合格者も出た。
正答率が最も高かったのは、【問14】星座早見盤で調べられることを問う問題(正答率97.3%)、続いて、【問21】太陽の観察で使ってよいものを選ぶ問題(正答率94.9%)、【問4】小惑星リュウグウのサンプルを持って帰った探査機の名前を問う問題(正答率94.1%)であった。他に90%を超えたものは、【問9】(91.7%)【問12】(91.2%)【問8】(90.9%)【問39】(90.4%)と、併せて計7問あった。
暗記問題では高い正答率が見られる一方で、正答率が低かった問題には、先入観や思い込みから正答に辿り着けなかった傾向が見られる。たとえば、【問32】金星が最も明るく見えるときに、望遠鏡で金星を見るとどのような形に見えるか」(正答率33.1%)では、38.1%の人が④の満月型を選んだ。なかなか金星の満ち欠けを見る機会はないが、科学館・プラネタリウムなどで開催している観望会に参加してみることをお勧めしたい。ガリレオが望遠鏡で見た天体のスケッチを残したように、意外な発見に驚くかもしれない。【問34】天の川銀河に最も近い銀河を答える問題(正答率39.5%)では、約46%の方が②のアンドロメダ銀河を選択した。大マゼラン雲も銀河であるという認識がテキストから得られにくかったのかもしれないという反省を『公式テキスト』の著者らにもたらした結果だった。【問17】太陽・月・地球が描かれた図から、見られる天体現象を問う問題(正答率45.1%)は、空間認知能力が試される問題かもしれない。約半数(49.1%)の方が、①の皆既日食を選択したが、太陽、月、地球の相互の距離の関係で皆既日食になるか金環日食になるか決まるので、改めて図をじっくりと見ておさらいしてほしい。【問20】こと座の環状星雲M57についての問題(正答率48.3%)では、約30%の方が④を選択。星雲というとオリオン大星雲のように、星が誕生しているところという印象があるが、惑星状星雲は星が死んでいくときにできるということを覚えておこう。正答率が50%を割ったのは他に【問18】土星の輪の見え方についての問題、【問37】上弦の月の見え方についての問題だった。

■3級

幅広い年齢層が受験しているのは例年と変わらない。受験者分布では、20代以下で50%を超えている。20~50代では女性が男性を上回った。合格率は前回(81.8%)には及ばなかったものの、79.0%、平均点も70.2点で高い水準を維持している。コロナ禍で「おうち時間」が増え、いつもより試験勉強にあてる時間が増えたことが影響したのか、10歳未満の合格率は前回(57.9%)を大きく上回り72.7%に及んだ。最年少の合格者は6歳の未就学児であった。
正答率が高かった問題は、【問1】太陽の正しい天文符号を選ぶ問題(正答率100.0%)、【問2】図から正しい古代の宇宙観を選ぶ問題(正答率95.8%)、【問4】ジャイアントインパクト説の正しい説明を選ぶ問題(正答率95.1%)。【問48】2020年に多くの火星探査機が打ち上げられた理由を問う問題(正答率93.4%)。【問36】月の公転周期と自転周期が同じことに関係する現象を問う問題(正答率92.3%)。上位中4問は、基礎的な定番問題ともいえる。受験者が過去問題から傾向と対策を立てている表れだろう。火星大接近はおよそ2年ごとに各メディアでも報道されていることも要因と考えられる。
一方、正答率が低かったのが、【問14】肉眼で見える星の範囲は銀河系の大きさと比較してどれくらいかを問う問題(正答率11.0%)。①10000分の1を選んだ受験者が66.6%と圧倒的に多かった。主要な天体の大きさや距離などは覚えておくと、計算問題が出題されても慌てることなく正答を導くことできるだろう。次に【問37】彗星の模式図から、彗星の進む向きを問う問題(正答率21.4%)。この模式図には太陽方向が明記されていないことに注意。【問11】日没にかかる時間を問う問題(正答率26.6%)。テキストの3章1節の太陽の動きと地球の自転の関係を理解しよう。【問29】惑星以外で環が見つかっている天体を問う問題(正答率28.5%)では、「衛星と準惑星」を選んだ方が多かったが、衛星には環が見つかっていない。本検定は問題数が多い(3級は50分で60問を解答する)ので、選択肢が変則的になると混乱してしまう傾向があるようだ。また、正答率が低い問題の特徴としては、毎年のことだが応用問題が多い。日頃から覚えた知識を使って別の角度から考えることを意識しておくことをお勧めする。

■2級

まずは、今試験において、2級試験問題に試験会場で問題文の訂正があり、混乱を招いた点をお詫び申し上げます。

近年、2級受験者数が増加しており、昨年に引き続き今回も3級の受験者数を上回った。特に20代、30代の受験者数が昨年より増加した。また、2級は高校地学で学ぶレベルの内容だが、小学生、中学生でチャレンジされる方も増えつつあり、今回は4年ぶりに10歳未満の合格者が出た。
正答率が9割を超えたのは次の2問。【問28】黒点が黒く見える理由を選ぶ問題(正答率98.6%)、【問34】太陽コロナに関する間違った記述を選ぶ問題(正答率92.0%)。【問21】宇宙の晴れ上がりとはどのような現象かを選ぶ問題(正答率88.8%)、【問51】図の測定装置について正しく説明したものを選ぶ問題(正答率88.6%)。
正答率が低かった問題は、【問46】明治時代に行われた改暦についての問題(正答率7.2%)。歴史的な出来事と天文学史が正確に結び付けられていないと正答に辿り着けない。次が【問41】太陽コロナのうち光源が太陽の光球からの光ではないものを選ぶ問題(正答率18.7%)。EコロナのEは「輝線」を意味する“Emission”に由来している。Fコロナ、Kコロナの語源もチェックしておこう。【問18】天文学史における重要な発見の順番を問うた問題(正答率21.7%)、【問30】銀河系の中心が太陽系ではないことが初めて示された際の根拠を選ぶ問題。(正答率25.9%)と続く。
当検定の2~4級の試験問題は、『公式テキスト』からのみ出題されるので、当然、『公式テキスト』を読み込むことが合否を分けるともいえる。たとえば、【問55】宇宙全体の元素の存在比を問う問題(正答率79.3%)は、テキスト掲載の図表を暗記していれば解ける問題だ。しかし、類似問題である【問23】太陽大気に存在する元素個数を多い順に正しく並べたものを選ぶ問題(正答率29.5%)は、太陽の周りに原始太陽系円盤が形成され、その中の重元素が集まって地球などの惑星がつくられた過程の理解が問われる。今回、得点数のピークは60点から69点のところにあり、あと一歩で合格という方も少なくなかった。次回もぜひ挑戦して合格を勝ち取っていただきたい。

■1級

1級受験には2級合格が条件となるが、挑戦されるのは初回から変わらず男性優位で、50代・60代が多い傾向は今年も同じであった。ただ、今年は20代の挑戦者が若干増加した。合格率は、第8回0.8%、第9回7.0%と推移してきて、今回は1.0%。平均点の46点は昨年よりも6点ほど低かった。今回は出題問題の後半に向かって正答率が低くなる傾向が顕著で、アンケートでも時間が足らなかったという声もあった。1級試験の問題数は40問だが、よく考えを巡らせなくてはならない問題も多いため、時間配分が合格のための鍵でもあろう。正答率が高かった問題は次の6問。【問25】クェーサー3C 273のスペクトル図からその赤方偏移を求める問題(92.0%)。【問4】ダークマターの存在を示す証拠として不適切なものを選ぶ問題(91.0%)。【問34】天文学で常用されるギリシャ文字に関する問題(89.0%)。いずれも、1級の公式参考書『極・宇宙を解く』の記述内容から出題されたもの。1級試験問題のうち4割程度が出題される参考書をよく読み込んで試験に臨まれていることがうかがえる。一方で、問題正答率が低かったのは、【問17】重力平衡状態にある星について正しい記述を選ぶ問題(5.0%)。【問40】南天の星座「ぼうえんきょう座」のモデルとなった望遠鏡を問う問題(7.0%)。【問38】惑星探査機「ボイジャー」搭載のレコードに収録されていない音楽を選ぶ問題(9.0%)。【問37】中国の月探査機「嫦娥(じょうが)」に関する誤った記述を選ぶ問題(14.0%)。4問のうち、問17が参考書の記述をアレンジして出題されたものである以外は、天文学史・時事問題である。例年、広範に及ぶ1級の出題範囲の中でも、天文学史に関する問題は正答率が低い傾向がみられる。受験者に向けて、推薦図書の提示などの対応も検討すべきかもしれない。

■総括

さて、本検定もついに節目の10年目となった。ここまで続けてこられたのは、ひとえに受検者の方々のおかげであり、開催スタッフやテキスト執筆者が頑張れるのも受検者の方々の期待と叱咤激励のおかげである。あらためて、深く感謝いたします。
さて、今回、始めて受検された方もおられれば、2度目の方、さらには何度もチャレンジされた方もおられるだろう。公式テキストは2年に1回の割で少しずつ改訂しているので、2度目3度目の方は途中でテキストが新しくなった方も多いだろう。天文学は日進月歩の分野であり、この10年ほどに限っても、重力をもたらすヒッグス粒子の発見(2012年)、プランク衛星による宇宙論パラメータの発表(2013年)、探査機ロゼッタの着陸機フィラエがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸(2014年)、ニューホライズンの冥王星到達(2015年)、重力波の初検出(2016年発表)、中性子星合体の対応天体検出(2017年)、はやぶさ2の小惑星リュウグウ到着(2018年)と帰還(2020年)、ブラックホールシャドウの撮影成功(2019年)、ブラックホール研究でのノーベル物理学賞(2020年)、などなど、ほぼ毎年、大きな発見があった。これら最先端の知見を少しでも早く反映するための2年ごとの改訂である。テキスト本文自体はあまり大きな改訂はないが、グラビア・傍注・コラムなどの変化を愉しんでいただきたい。また本文の内容なども含め、その級のテキストとして不満な点などあれば、ご意見やご要望を寄せていただければ次回の改訂で検討いたしたい。
初回から続く傾向としては、2級や1級で出てくる数式問題について、一般に正答率が低くなることがある。数式を使わないと計算や現象を表せないわけではない。実際、江戸時代の和算もそうだし、メソポタミアなどの古代文明でも、数式を使わずに、さまざまな計算をしていた。ただし、それらは非常に複雑になる。数式を使えば、非常にエレガントに表現や答えの導出ができるのだ。昔の算法と比べれば、数式によって表現方法が大きく進化したわけである。そういう観点からも、数式の“ありがたさ”を今一度、考えてほしい。
また同じく初回から続く傾向としては、天文学史や宇宙開発・時事などの正答率が低いということもある。一般の人からみると、天文学史はともかく、宇宙だから天文も宇宙飛行士も同じ分野のように思われることが多い。しかし、研究的な側面からは、分野としても研究者の集団としても、天文学研究と宇宙開発と天文学史は、大きく違った分野なのだ。ここだけの話だが、講評子も天文分野に所属しており、実は宇宙開発や天文学史は苦手である。にもかかわらず、天文宇宙検定として、これらすべてを扱っているのは、やはり広い意味では天文学に関わる興味深い分野だと考えているからだ。苦手な分野も一緒に勉強していきましょう。
新しいことを学ぶこと、無駄な知識を覚えること、そして不思議な現象を理解すること、などなどに歓びを見いだしながら、これからも天文宇宙検定を愉しんでいただければ幸いである。

2021年2月吉日
天文宇宙検定委員会

第10回試験問題、ご質問に対する回答

第10回の試験問題について、ご質問をお寄せいただき有難うございました。

以下に、お寄せいただいたご質問・ご意見について回答申し上げます。

 

●3級・問14について

【問題文】 肉眼(にくがん)で見える星は、銀河系(ぎんがけい)(天の川銀河)のほんの一部でしかない。肉眼で明るく見える星のある範囲(はんい)の半径は、 銀河系全体の半径と比較(ひかく)するとどれくらいか。

①10000分の1

②1000分の1

③100分の1

④10分の1

 

【正解】
③100分の1

 

【解説】
肉眼(にくがん)で明るく見える星は、ほとんどが地球から1000光年くらいの範囲(はんい)にある。銀河系(ぎんがけい)全体の大きさは、まだ議論(ぎろん)が続いているものの、大ざっぱに10万光年と考えられている。よって都会でも見えるような明るい星のある範囲は、銀河系全体の50分の1より小さい=ざっと100分の1程度である。ちなみに1万光年以上離(はな)れていても、肉眼で見える星は存在(そんざい)する。

 

【質問】
「銀河系全体の半径」とあるのは「直径」の間違いではないでしょうか。解答にも「銀河系全体の大きさは、まだ議論が続いているものの、大ざっぱに10万光年と考えられている。」とあり、テキストでも直径10万光年とされています。また、ハローの広がりは15万光年とされており、どの数字を使うかで考え方が違ってきます。全員正解とすべきではないでしょうか。

 

【回答】
この問題は、おおざっぱな値(あたい)(天文学ではオーダーとよびます)を把握(はあく)して、どちらの桁(けた)に近いかを判断(はんだん)してもらう問題です。星のある半径を1000光年として、銀河系(ぎんがけい)の直径と比較(ひかく)すれば、確かに100分の1と、すっきりした数値になりますが、あえてイメージがわきやすいように、どちらも半径で比較し、どちらがより近いかを判断していただく問題になっています。星のある範囲(はんい)を1000光年とすると、銀河系の半径と比較した場合、50分の1になります(ハローの15万光年を採用(さいよう)するなら75分の1)。これが100分の1に近いのか、10分の1に近いのかを判断します。100分の1と比較すると2倍のずれ、10分の1と比較すると5倍のずれになります。したがって、オーダーで考えると、10分の1ではなく100分の1となります。このような趣旨(しゅし)の問題であり、問題がまちがっているわけではありません。

 

●2級・問1と問題訂正について

【ご意見】
〇今回は問題訂正が4問あり、突合せに時間がかかりました。このような時は時間を5分延長するといったような対応も必要かと思いました(ご質問文より一部抜粋)。
〇公式テキストには記載があったようですが、テキストを使って勉強していない者にとっては混乱する問題でした。また、訂正があったためパニックになったという声も受験後聞いたので、全員正解などの対応をして欲しい(ご質問文より一部抜粋)。

【回答】
ご意見ありがとうございます。2級問題に複数の訂正があり、受験者のみなさまに混乱を招いたことを深くお詫びします。また、2~4級の出題は公式テキストの内容から出題すると事前に告知しておりますが、今後は告知の徹底をさらに図る所存です。いただいたご意見は次回の参考にさせていただきます。

 

●2級・問10について

【問題文】 アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズでよく登場するスペースコロニーでは、どのようにして重力と同じ働きをする力を得ようとしているか。

①マイクロブラックホールを搭載している

②超高速で回転するジャイロを搭載している

③スペースコロニー自体が並進加速度運動をしている

④スペースコロニー自体が回転している

 

【正解】
④スペースコロニー自体が回転している

 

【解説】
スペースコロニーは1969年にジェラルド・オニールが提唱した宇宙空間の人工居住地で、スペースコロニー自体を回転させることで遠心力による擬似重力を得ることが考えられている。例えば直径6.4kmのスペースコロニーが、110秒で1回転すれば地球と同程度の疑似重力が得られるが、回転と同じ方向に移動すれば疑似重力は大きくなり、横方向であればコリオリの力を受ける。例えばコロニー内で野球をすると、野球場の向きによって打球の行方が大きく変わるとの試算もある。

 

【質問1】
ガンダムというアニメ内のァンタジーの世界の中のスペースコロニーを問う問題と読み取れる文章でした。一般的なスペースコロニーの設問だとしても設問として生かすにはおかしい文章でした(ご質問文より一部抜粋)。

【質問2】
なぜ高速回転させてはいけないのでしょうか?ガンダムを知らない私にとっては解きにくい問題でした…(ご質問文より一部抜粋)

 

【回答1】
問題文として分かりづらい表現であったこと、また問題と共にコロニーの図を掲載するなど配慮がたらなかったことをお詫びします。『機動戦士ガンダム』に登場するスペースコロニーは、アニメの創作ではなく、そもそもオニールのスペースコロニーを参考にしています。

【回答2】
テキストP.138に、「『機動戦士ガンダム』などアニメにも取り上げれられている。」と記述があるように、そこに登場するスペースコロニーは、アニメの創作ではなく、そもそもオニールが提唱したスペースコロニーを参考にしています。②は、ジャイロが高速回転するだけで、スペースコロニー自体が回転するとは限りません。スペースコロニー自体が回転しないと、疑似重力はつくれないので、②は誤りです。

 

●2級・問40について

【問題文】
1光年は1天文単位の約何倍になるか。

①1000倍

②10万倍

③100万倍

④1億倍

 

【正解】
②10万倍

 

【解説】
1天文単位は1.5×1011mで、1光年は9.5×1015mなので約10万倍違う。さらに、1光年の10万倍が銀河系のサイズ(約10万光年)になる。

 

【質問】
問40は選択肢が雑すぎるのではないでしょうか。3級テキスト6章のコラムに載っていますが、「1天文単位は1.5億km、1光年は10兆km」で、これを覚えて計算してきました。割り算をすると66666倍で、約7万倍ということになります。それを約10万倍と答えさせるのは、ほかの厳密な計算問題と比べても整合性が取れません。そもそもこれは2級レベルではなく、3級レベルでは?もやもやとしています(ご質問文より一部抜粋改変)。
【回答】
この問題は、おおざっぱな値(天文学ではオーダーと呼びます)を把握してもらうもので、天文学的な捉え方、概算という概念を理解していただく意図で出題いたしました。ご意見ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。

 

●1級・問14について

【問題文】

低質量の主系列星の光度は、質量のおよそ3乗に比例する。この場合、太陽の質量の0.5倍の主系列星の寿命はどれくらいか。なお、太陽の寿命を100億年とする。

①200億年

②400億年

③600億年

④800億年

 

【正解】
②400億年

 

【解説】
質量をM、光度をLとすると、質量光度関係はLM3と表される。主系列星の寿命τは質量を光度で割った値に比例するので、τ∝M /LM /M3M-2となり、寿命は質量の2乗に反比例する。したがって、太陽の質量の0.5倍の主系列星の寿命は、

τ=100億年×(0.5)-2=100億年×22=400億年となり、②が正答となる。

 

【質問1】
公式問題集によると星の明るさはコードLは3乗から4乗に比例すると書いてあります。星の寿命のτはL分のMに比例するから星の質量Mをコードで割ったものになり、質量の3乗から4乗分のMの3乗から4乗分のMだからMの2乗から3乗分の1になります。太陽の質量の2分の1の寿命はどれかっていうと4分の1から8分の1になります。答えは400億年から800億年の範囲になるから解答は③600億年を選びましたが解答は②400億年ということになるとのことですが、一度お調べいただけないでしょうか。

 

【回答1】
多くのテキストなどには、「主系列星の光度は質量の3~4乗に比例している」と書かれていますが、これは、横軸に質量の常用対数値を、縦軸に光度の常用対数値をとってプロットすると、全体的にほぼ直線状に分布し、その傾きが3~4の間にあることを意味しています。しかし、その分布を詳しくみると、低質量側で傾きが小さく3に近くなり、質量が大きいと傾きが4に近くなります。
この問題では、「低質量の主系列星の光度は質量のおよそ3乗に比例する」と規定しており、「質量が太陽の0.5倍」と、主系列星も低質量側にありますので、3乗で計算した結果を正答としています。1級公式参考書『極・宇宙を解く』の「第3章 恒星の世界 27.主系列星の質量光度関係」の項に詳述してありますので、ご参照ください。

 

【質問2】
上記回答で、「しかし、その分布を詳しくみると、低質量側で傾きが小さく3に近くなり、質量が大きいと傾きが4に近くなります。(中略)1級公式参考書『極・宇宙を解く』の「第3章恒星の世界 27.主系列星の質量高度関係」の項に詳述してありますので、ご参照ください。」とありますが、公式参考書P.114の(27.6)式によると、質量が小さく低温の恒星では、光度は質量の5乗に比例する旨が書かれており、逆に質量の大きな恒星は質量の3乗に比例することが書かれています。回答の内容は、テキストの内容と矛盾していませんか。問題文には確かに「低質量の主系列星の光度は、質量のおよそ3乗に比例する。」ことが前提とされており、それを前提にすれば答えは導かれますが、そもそもの前提がテキストの内容と違うことにかなり違和感を覚えました。

 

【回答2】
ご指摘の通り、確かにテキスト(極・宇宙を解く)には、「低質量側で光度の5乗に比例する」と書いてあります。この部分は、理論的な導出が述べられていますが、理論的な考え方をおおざっぱな見積もりで示したものです(例えば、中心温度は一定とするなど)。
他方、観測的に見ますと、参考図1に示すように、低質量星側では傾きは少し小さめになります。この図は、テキストの演習のデータを使って作成したものです。

また、大質量星のデータは少ないですが、別の資料から作成したものも示します(参考図2)。観測的には、低質量星側と大質量星側で少し傾きが変化することがわかると思います。

問14は、このような観測事実をもとにして作成しましたが、テキストの記述と矛盾がありました。
テキストの理論的見積もりは、簡単な見積もりで質量光度関係がだいたい導けること、低質量星側と大質量星側で異なることを示したものです。観測的には、上述の回答どおりです。観測的な事実と、テキストの理論的導出の結果が矛盾してしまったのは、テキストの理論的な導出が粗いためだと考えてください。
頂いたご意見はテキスト改訂時に、参考にさせていただきます。

 

●1級・問40について

【問題文】
南天の星座に「ぼうえんきょう座」がある。これは、南天の観測を終えたニコラ=ルイ・ド・ラカイユが作成した14の星座の1つで、1756年に彼の星図で表記された。この「ぼうえんきょう座」の望遠鏡は何がモデルになっているとされているか。

①ガリレオ・ガリレイの作った望遠鏡

②アイザック・ニュートンの作った反射望遠鏡

③ウィリアム・ハーシェルの巨大反射望遠鏡

④ジャン=ドミニク・カッシーニが使った空気望遠鏡

 

【正解】
④ジャン=ドミニク・カッシーニが使った空気望遠鏡

 

【解説】
ぼうえんきょう座は、いて座やみなみのかんむり座の南にある星座で、暗い星ばかりでできている目立たない星座である。ラカイユは当時、土星のカッシーニの隙間など様々な発見をしていたパリ天文台のジャン=ドミニク・カッシーニ(1625–1712)の望遠鏡をモデルにしたとされている。実際ヨハン・ボーデの星図などには、長い望遠鏡が描かれており、ニュートンの反射望遠鏡やガリレオの望遠鏡とはあきらかに違う。なお、ハーシェルが活躍したのは1773年以降で、有名になったのは1781年の天王星発見。巨大望遠鏡の建設はさらに後の1785年以降に作られている。

 

【質問】
設問40の正答が選択肢④カッシーニの空気望遠鏡であること自体に疑義はありません。キーワード「ぼうえんきょう座」だけで検索してもその旨の記述が複数見つかること、ラカイユとカッシーニの関係、ぼうえんきょう座が作られた当初は現在より遥かに長い領域だったこと、競うように「ハーシェルのぼうえんきょう座」が作られたことなどから、納得できます。しかし、ぼうえんきょう座が作られた当時の古星図はともかく、現在書店や図書館にある書籍の多くに採用されているぼうえんきょう座の星座絵は、ほぼ全部が空気望遠鏡ではなく鏡筒がある屈折望遠鏡に見える形状に描かれており、選択肢①ガリレイの望遠鏡を参考にしたと思われるものも複数見受けられます。神話が無いため、由来に言及していない本も少なくありません。ということで、①ガリレイの望遠鏡が選択肢にあるのは「引っ掛け問題」の範疇を超える紛らわしさに思え、「メシエの望遠鏡(監視者メシエ座が作られたことがある)」にでもしていただいた方が疑義の余地を無くせたかと思われるのですが、いかがでしょうか。

 

【回答】
「ラカイユが作成した星座は1756年に彼の星図に表記された」と問題中にヒントがあります。彼は同時代・少し前の機器を星座としてとりあげています。時代的に、ガリレイ、ニュートン、ハーシェルは排除するためのヒントになるので誤答として設定しています。有名な天文学者とその時代、星座の成立などから、仮に知らなくても、類推できる問題と考えています。

4級テキスト【2020年版】へのご質問と回答

『4級公式テキスト』に、読者の方より、以下のようなご質問をいただきました。

「6ページでは、「……探査機が他の太陽系の中を通過する確率は、100億年に1 回以下といわれている」。18ページでは、「ボイジャー1号や2号が他の太陽系の中を通過する確率は1億年に1度くらいと考えられている」と、表記の揺れがございます。どちらが正しいでしょうか(ご質問メールを一部改変)。

まずは、回答が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
ご指摘いただきました、表記の揺れによるわかりづらさにつきましては、今後の編集業務の参考にさせていただきます。
ご質問いただきまして、誠にありがとうございました。

以下に、編者からのお返事をお伝えします。
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100億年に1度以下が正しい。
ただ、1億年に1度でもまちがっていないのです。

科学者の研究によると、現在発見されている星の数からすると、ボイジャーが、他の恒星を中心とする直径1光年の範囲を通るのは500万年ごとです。
太陽系の天体で、現在直径1光年は太陽から発見されている一番遠い天体(2018 VG18)までの距離の250倍です。つまり「まと」の幅が250分の1、面積は6万分の1になりますから、太陽系の中を通るのはさらに6万倍も難しく、3000億年に1度となります。

実際にはまだ発見されていない星もたくさんありますし、太陽系の大きさもより広いかもしれません。そう考えると100億年から1000億年に1度くらいと考えるのがよいでしょう。

ただ、太陽系の大きさはもっとずっと広くて、2光年くらいあるという考えもあります。
そうなると、100万年に1度は他の太陽系の中を通るといえないことはありません。
太陽系の大きさはまだよくわかっておらず、もしかしたらもっとひんぱんに他の太陽系を通るかもしれません。

ただ、隣の太陽系まで、もしまっすぐに行ったとしてもボイジャーは10万年はかかりますので、1000年ということはありません。
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