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第3回天文宇宙検定受験者データおよび講評

○第3回天文宇宙検定受験者データ

第3回天文宇宙検定(2013年10月13日開催)
●最年少受験者
6歳
 
●最高齢受験者
83歳
 
●受験者男女比率
1級:男性86%、女性14%
2級:男性67%、女性33%
3級:男性55%、女性45%
4級:男性59%、女性41%
 
●合格率
1級:1.1%
2級:23.7%
3級:54.7%
4級:81.3%
 
●最高得点
1級:73点
2級:99点
3級:93点(2名)
4級:100点(5名)
 
●平均点
1級:44点
2級:58点
3級:61点
4級:74点
 

○第3回天文宇宙検定講評

■4級
20歳未満が約6割を占め、受験者の年齢構成は前回と大きく変わらなかった。しかし、前回90%以上あった20歳未満の合格率は、約70%まで下がった。これにより、平均点は82点から74点に下がった。一方、50代以上の受験者では、合格率は9割を超えている。
最も正答率が低かった問題は、【問12】正しく東西南北が示されている星座早見盤を選ぶ問題(正答率36%)。【問26】十五夜の翌日の月である十六夜(いざよい)の意味を問う問題(正答率50%)。【問28】12月の中ごろに見られる流星群の名前を問う問題(正答率56%)。以降、正答率の低かった順に、【問5】ベテルギウスがいま爆発したとして、地球上の人類がその様子を目にするのは何年後か(正答率57%)。【問35】ギリシャ神話の勇者ペルセウスの物語に登場する者のなかで星座になっていないものはどれか(正答率58%)。【問18】光の速さで太陽まで約8分かかるが、太陽までの距離はどれだけか(正答率58%)。昨年と同様に、距離の概念に不慣れな小学校低学年が苦戦する傾向がみられる。
正答率の高かった問題は、【問37】月面を歩いた宇宙飛行士の人数は?(正答率97%)。【問22】写真からガリレオ衛星でないものを選べ(正答率95%)。宇宙開発や宇宙探査についての問題は、例年どおり比較的正答率が高く、受験者の興味の深さや知識の充実ぶりがうかがえる。その反面、星座早見盤や天体望遠鏡の使い方に関する問題で正答率の低さが目立つ。これは、実際に観測した体験のない人が多いことも影響しているのかもしれない。科学館や博物館では、観望会が盛んにおこなわれているので、ぜひ参加されることをおすすめしたい。実体験から得られる知識は、深い印象をもって記憶され、知識に広がりを与えてくれるだろう。また、【問20】十五夜の説明のなかで誤りを問う問題(正答率61%)では、「①十五夜は旧暦の8月15日の日付に行う」を誤りとして選択した人が25%あり、七夕や月見などの伝統継承について考えさせられる結果となった。天文学は古い学問であり、文化の継承についても大きな役割を果たしていることを普及していきたい。
 
■3級
今年の傾向として、30代より若い世代において合格率が低い傾向がみられた。
最も正答率が低かった問題は次のとおり。【問36】約1000光年にある星の数が銀河系内の星の数の1億分の1とすると銀河系の大きさはどのくらいになるか(正答率19%)。【問72】アポロ11号の人類初の月面着陸よりも早い出来事を問う問題(正答率20%)。【問15】江戸時代の時刻、不定時法について問う問題(正答率21%)。天文学史や暦に関する問題を苦手とする傾向がみられる。
正答率の高かった問題を見てみると、【問18】写真から北極星を探す問題(正答率97%)、【問17】黄道十二星座に含まれない星座を問う問題(正答率96%)、【問24】「惑星」という名前の由来を問う問題(94%)と続く。本検定の定番問題ともいえる基礎的な問題については、試験対策がしっかりとなされているのが感じられた。
前回の反省から、3級については、桁数が多く解答に時間を要する問題数を減じたが、【問44】光速の10%の速さの銀河鉄道でアンドロメダ銀河まで旅をした場合の年数を問う問題(正答率36%)など、計算を要する問題の正答率が低い傾向は変わらない。また、【問43】太陽系の惑星が互いに最も近付いたときに最も距離が遠いものを選ぶ問題(正答率31%)など、スケールをとらえられていない受験者が多い傾向がみられる。太陽・月までの距離や地球の大きさ、銀河系の大きさ、光の速さなど基本的数字や比率を覚えておくことが、素早く解答を導くための手助けとなるだろう。
 
■2級
昨年は15.9%だった2級の合格率が、今回は23.7%と大きく伸びた。今回より、公式テキストの改訂により、宇宙工学・宇宙開発に関する問題が出題されたことが原因として考えられる。また今年は、11歳の小学生が見事に合格を果たした。素晴らしい努力だと思われる。また全般にいえることでもあるが、50代60代の合格率は他の世代より10%程度高く、公式テキストを熟読して学ばれている姿勢がうかがえる。
最も正答率が低かった問題は、【問57】年周視差の発見者を問う問題(正答率25%)。次いで【問28】日本最初の民間による観望会の開催年を問う問題(正答率25%)。天文学史に関する知識もしっかりと身に着けて試験に臨んでもらいたい。三番目に正答率が低かったのは【問13】太陽系形成初期に起こったことを選ぶ問題(正答率26%)。
正答率の高かった問題は、【問61】宇宙の構成元素で最も多いものは?(正答率95%)。次が【問45】馬頭星雲が黒く見える理由を問うもの(正答率94%)。【問15】パルサーとは何かを問う問題(正答率92%)と続く。【問32】昔の観測機器であった大象限儀の名称を問う問題(正答率32%)や、【問19】液体ロケットの考案者を問う問題(正答率31%)など天文学史のジャンルは軒並み正答率が低く、合格にあとわずか及ばなかった受験者に取りこぼしがみられる。
 
■1級
最難関の1級の平均点は、昨年とほぼ変わらず44点(昨年は43点)。受験者の約5割が40点台であったなか、今回も少数の「天文宇宙博士」が生まれた。その日々の研鑽と知識の深さに拍手を送りたい。
正答率が低かった問題は、【問36】グレゴリオ暦の導入が最も遅かった国を問う問題(正答率7%)。次いで【問33】恒星進化論によると主系列の段階でも時間とともに光度が徐々に上昇する、その理由を問う問題(正答率8%)。【問6】映画「スターウォーズ」に出てくる宇宙要塞デス・スターと大きさが近い天体を問う問題(正答率10%)と続く。
最も正答率の高かった問題は、【問5】2013年にロシア・チェリャビンスク州に落下した隕石について正しい記述を選ぶ問題(正答率95%)。次が【問18】現在の銀河系で起こる恒星の形成現場と比べて、宇宙で最初に誕生する恒星(初代星)の形成現場に確実に欠如しているものを問う問題(正答率94%)。三番目は、【問14】プレアデス星団と付随している反射星雲に関して正しい記述を選ぶ問題(正答率84%)。
次年度からは、1級についても公式テキストが欲しいという声に応え、問題の5割程度を出題するテキストを準備中である。
 
■太陽系や地球など、身近な宇宙に関しては比較的よく知られており、今年も宇宙開発関係などは正答率は高かった。しかしながら、太陽系から遠い宇宙についても、本年度はそこそこに回答がなされたようで、宇宙全般について関心が高まってきたように思われる。
ただし、暦やギリシャ神話や天文学史など、天文宇宙に関わる分野で文系的な色彩の強い領域については、あまり興味がもてないのか、正答率が低い傾向がみられる。一方で、ちょっとした概算や簡単な計算などを必要とする問題も敬遠される傾向がある。すなわち、全般的には、天文や宇宙そのものに関わる暗記的な問題が、アタックしやすく、正答率も高いようだ。
天文宇宙検定委員会として、天文や宇宙に関わるさまざまな知識を身につけていただきたいので、いろいろな事柄を覚えていただくことは大変に嬉しいことだ。と同時に、もう少し踏み込んでもらって、より深く宇宙を理解し愉しむために、自分の手で宇宙の事柄を概算したり計算できるようになって欲しいとも考えている。あるいは文系的な立場で天文や宇宙を捉えてみると違った面白さもみえてくると思う。
さまざまな学問分野の総合的な学問として、天文学や宇宙科学を楽しんでいただきたい。
 
2013年12月吉日
天文宇宙検定委員会

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