第20回試験問題について、ご意見・ご質問を頂戴しまして、ありがとうございます。
以下のとおり、ご質問へご回答申し上げます。
質問者からの文章はご本人様に転載のご許可をいただき、一部を割愛させていただきました。
■20回・3級・問49
【設問】
次の星の名前のうち、仲間外れはどれか。
① アルタイル
② 牽牛星(けんぎゅうせい)
③ 彦星(ひこぼし)
④ ベガ
【正答】
④
【解説】
④以外は同じ星のことを指す呼(よ)び名である。アルタイルはわし座の1等星として知られ、七夕では彦星(ひこぼし)として知られており、中国では牽牛星(けんぎゅうせい)と呼ばれている。ベガはこと座(ざ)のα(アルファ)星として知られる星で、日本では織姫星(おりひめぼし)として親しまれている。なお、ベガ、アルタイル、はくちょう座のデネブの3つの星で夏の星空の目印である「夏の大三角」をなしている。
【質問】
「次の星の名前のうち、仲間外れはどれか。」という柱書のもと、4つの選択肢が示され、おそらくわし座α星の異名ではないものを選択させる趣旨かと思料いたします。
しかし、「仲間外れ」の前提である「なにが仲間か」という点について問題文中に定義が示されないことから、厳密には別解がありうる内容と言わざるを得ません(例えば、「③彦星」のみが日本語に由来する名称であり、他はすべて外国語由来である、といった解釈が十分可能です)。
また、そもそも天文への関心は万人に開かれているものであり、宇宙への進出は国籍を超えて人類が協力すべき分野であると信じますところ、子供さんも多数受験される試験であることを踏まえると、しばしば集団からの排除の意味合いを含む「仲間外れ」という用語を安直に用いるべきではないと考えます。
上記の意味で、標記設問は、科学的態度として、または教育上配慮として、やや設問として適切を欠くかと思います。
【回答】
貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます。
ご指摘いただいた「設問の条件」および「言葉の選び方」の2点につきまして、以下の通り回答申し上げます。
1. 設問の意図について選択肢の分類について、ご指摘の通りでございます。
単語の並びだけでみれば、言語的由来など、多様な切り口での分類が可能です。本検定は天文学に関する知識を問うものでありますため、特段の指示がない限り、選択肢の分類基準は「天文学的な分類」に置くことを前提として出題しております。
本問におきましても、「同一の天体を指す名称か否か」という天文学的知識を問う意図で作問されており、正答は解答速報のとおりです。
今後は誤解が生じないよう、「指し示す天体が異なるものはどれか」といった、より明確な問い方を心がけてまいります。
2. 「仲間外れ」という用語の教育的配慮について言葉の選択に配慮に欠けるのではないかというご意見、大変重く受け止めております。
「異なるもの」「該当しないもの」といった、より客観的で中立的な表現を用いるべきであるというご提案は、まさに教育的見地から尊重されるべきご意見です。感謝申し上げます。
今回の正答に関しては、天文学の試験という文脈に基づき変更はございませんが、ご指摘いただいた御意見につきましては、次回の検定試験作成時の重要な検討事項とさせていただきます。
大変貴重なご提言をいただき、深く感謝申し上げます。
**************************************************
■20回・1級・問5
【設問】
無重力で、ろうそくを点火した場合の炎の状態の説明として正しいものを選べ。
① 点火後すぐに火が消える
② 地上での燃焼と同じように燃える
③ 炎が丸くなる
④ ろうそく本体も一緒に燃える
【正答】
③
【解説】
無重力では熱対流がないので、地上の炎のように紡錘型の炎とはならない。流れはないが、燃焼に必要な酸素は拡散によって周囲より炎に供給され、丸い炎となる。箱や大型のカプセルを自由落下させることで、地球上でも落下中の短時間にその中に無重力状態を作ることができる。その落下塔の実験にて、ろうそくを燃やして炎の様子が観察されている。
【質問】
1級を受験しました。
正解は③とのことですが、①も考えられるのではないでしょうか?
『宇宙からオーロラは見えるの?』ハヤカワ文庫 p.142よりの引用です。
「今度はスペースシャトルでの場合を考えてみよう。まず第一に、炎は涙の形にならず、 丸くなるんだ。なぜかというと、対流が生じないからだ。地球上で熱い空気が上昇する (対流する)唯一の理由は、周囲の空気よりも軽いことだ。温度の高い分子同士は間隔が開き、密度が低くなる。そのせいで上昇するんだ。だけど、無重力状態でなにかがなにかよりも軽いとか、重いというようなことはありえない。熱い空気も、冷たい空気も、 重さは同じ――ゼロなんだ。つまり、ロウソクは芯のそばの空気の酸素を使いつくしたら消えてしまう。要するにきみは、すぐに消えてしまうボール形の炎を目にすることになるんだ(この説明は空気の流れがないという前提に基づいている。シャトルの機内では、ファンが空気をかきまわしているので、たぶんロウソクは燃えつづけるだろう)。」
この考えですと、①が正解となってしまいます。
最終的には、どちらが正解ですか?
【回答】
結論から申し上げますと、本設問の正答は「③ 炎が丸くなる」で変更ございません。
その理由は、以下の2点に基づきます。
1. 「対流」がなくても「拡散」によって燃焼は続く
ご指摘の通り、地上では温められた空気が軽くなって上昇する「対流」によって酸素が供給され、炎は縦に伸びた形になります。
無重力下ではこの対流が起きないため、地上の炎のような勢いはなくなります。
しかし、対流がなくなっても、物質が濃度の高い方から低い方へと広がる「拡散」という現象はなくなりません。
無重力下のろうそくは、この「拡散」によって周囲から酸素が供給され、燃焼を継続します。
拡散はあらゆる方向から均等に行われるため、炎は球形(丸い形)となります。
2. 「すぐに」消えるわけではない
ご質問者の指摘にある通り、拡散による酸素供給は、対流に比べると非常にゆっくりとしたものです。
そのため、完全に密閉された小さな容器内などで、空気の流れ(換気)が一切ない場合には、
最終的に酸素不足で消えてしまう可能性はあります。
しかし、ここで重要となるのは、選択肢①にある「すぐに」という言葉です。
落下塔(ドロップタワー)や宇宙船内で行われた実験映像では、
点火後、炎が瞬時に消えることはなく、球形の炎となって一定時間燃え続ける様子が確認されています。
周囲に酸素がある限り、拡散によって供給される酸素で、
少なくとも点火直後の数秒~数分(環境による)は、特徴的な「丸い炎」として存在し続けます。
したがって、「点火後、炎が存在する時間は確実にあり、その形状は丸くなる」
という事実は揺るぎなく、「点火後すぐに(瞬時に)消える」とする①は不適切であり、
現象の特徴を最も正しく表している「③ 炎が丸くなる」が正答となります。
ご指摘いただいた文献の記述も「対流がない」という物理現象の説明としては正しいものですが、
本設問では「無重力下特有の炎の形状変化」および「燃焼現象の継続性」を問う意図から、
上記のような結論となります。
ご質問をいただきまして、感謝申し上げます。
********************************************
■20回・1級・問21
【設問】
シンクロトロン放射についての正しい記述を選べ。
① シンクロトロン放射はべき乗スペクトルにならないこともある
② シンクロトロン放射が起こるためには重力場が必要である
③ 陽子のシンクロトロン放射は起こらない
④ シンクロトロン放射と逆コンプトン散乱は同時に起こらない
【正答】
①
【解説】
まずシンクロトロン放射は磁場中を螺旋運動する高エネルギー荷電粒子によって起こるので、重力場は必要ない。また質量の軽い電子の方が効率よく放射するが、陽子のシンクロトロン放射も存在する。さらに高エネルギー電子によって低エネルギー光子が高エネルギーに叩き上げられる現象が逆コンプトン散乱だが、シンクロトロン放射で発生した光子がシンクロトロン放射を起こした高エネルギー電子で逆コンプトン散乱されることもある(これはシンクロトロン自己コンプトン散乱と呼ばれる)。最後に、シンクロトロン放射を引きおこす高エネルギー電子は多くの場合は非熱的電子でべき乗分布をしており、シンクロトロン放射も電子分布を反映してべき乗スペクトルになることが多い(べき乗指数は異なる)。しかし高温電離ガスの電子によるシンクロトロン放射も可能で、その場合は、高温電子の熱分布(相対論的マクスウェル分布)を反映して、シンクロトロン放射のスペクトルもべき乗ではなくピークをもったスペクトルになる。

【質問】
問21について、正解を①とされています。
間違いではないのでしょうが、配慮が足りないのではないかと思います。
以下、その理由を説明します。
公式参考書の第1章6節 電磁波スペクトル P30 5行目には次のように記載されています。
「シンクロトロン放射のスペクトルは,図6.4のような,べき乗型スペクトルになる」
この記述があることにより、以下の問題が発生すると考えます。
・べき乗型スペクトルになると断定していることにより、今回の解答と矛盾が生じている
・公式参考書と指定されているため、多くの受験者は本の記載を拠り所とする
その他の級と違い範囲のない試験とされていることから、本に書かれていない問題が出ることは理解しています。
しかし、本に書かれている内容と反対の問題が正誤問題として出された場合は、
公式参考書とされている本を拠り所として判断してしまうため、
正解であるべき1番の選択肢は除外されてしまうことになります。
【回答】
ご質問をいただき、誠に有難うございます。
1級問21につきましては、選択肢を導く根拠となる参考書の記述に不正確な点があったと判断し、
「受験者全員を正解」とする措置をとらせていただきます。
ご指摘通り、1級参考書『極・宇宙を解く』において、シンクロトロン放射のスペクトルに関し、
「シンクロトロン放射のスペクトルは,図6.4のような,べき乗型スペクトルになる」
と断定的に記述されておりますが、これは物理現象の解説として不正確でございました。
本来であれば、
「シンクロトロン放射のスペクトルは,多くの場合、図6.4のような,べき乗型スペクトルになる」
と、記述されるべき性質のもので、断定的な表現が誤解を招く記述でした。
以降は、正誤表をもって対応してまいります。
貴重なご指摘に対し、深く感謝申し上げます。
**************************************************
■20回・1級・問26
【設問】
図はHα線の自発遷移(自発放射)を表す模式図である。可視光における単位時間当たりの遷移確率はどれぐらいか。

① 10-16 s-1
② 10-8 s-1
③ 108 s-1
④ 1016 s-1
【正答】
③
【解説】
励起状態にある原子は自発的に下位の準位に遷移する。この遷移確率は放射光子の波長に依存し、可視光付近の波長では、108 s-1 程度で遷移する。この遷移確率の逆数、すなわち、10-8 s が遷移前の励起状態での平均滞在時間になる。遷移“確率”なのに1よりも大きいのは変な気がするかもしれないが、単位時間当たりになっているためである。言い換えれば、平均滞在時間の 10-8 s で遷移する確率が1になるということである。なお、量子力学やシュレーディンガー方程式は1電子の振る舞いを記述する理論で、原子における電子のエネルギー準位を計算することはできるが、自発遷移など、光子が放射や吸収が起こるような粒子数が変化する量子現象を説明することはできない。自発遷移は場の量子論を用いて正確に記述できる。
【質問】
① 問題文ではHα線とあるが、図がライマン系列のように思える
② Hαの遷移確率であれば10の7乗のオーダーでないか?
③仮に回答のように10の8乗であるとすれば、これはライマン系列の2⇒1の確率ではないか?
Atomic Transition Probabilities Volumeを参考にしました
【回答】
ご質問ご指摘ありがとうございました。
まず、本設問で提示いたしました図についてですが、
これは水素原子のすべての準位を厳密に並べた説明図ではなく、あくまでも2つの準位を描いた模式図です。
図中の上の準位(仮にE2と置いたもので、 特定の第一励起状態を意味していません)から、
下の準位(E1も特定の基底状態を意味してはいません)へ、
外からの放射がなく自然に遷移する「自然放射」の概念を表しています。
次に、遷移確率の値についてですが、
これは放射光子の波長に依存し、 Hα光子(可視光)の場合、より正確には
0.44×108 s-1
となります。
これを108 に丸めて表記しましたが、数値としてはご指摘いただいたように 107に近い値です。
ただ、この問題の主旨としましては、遷移確率の逆数である 滞在時間(この場合は 10-8 s)が非常に短い
ということを紹介することに重点を置いております。
滞在時間が 10-8 sであることを導くために、 大きく桁の異なる選択肢の中で、遷移確率をおおまかに 108 と丸めました。
研究者レベルの視点からはやや厳密性に欠ける部分があったかもしれませんが、
天文宇宙検定1級は大学での天文学レベルの知識を想定しており、
詳細なAtomic dataや場の量子論の計算までは範囲として想定しておりません。
専門的な視点を持つ方にはご不満な点が残るかもしれませんが、
上記のような出題意図をご理解いただけますと幸いです。
専門的な知見に基づく貴重なご意見は、今後の検定運営の参考とさせていただきます。
今後とも天文宇宙検定をよろしくお願い申し上げます。
********************************************
■20回・1級・問26
【質問】
11月16日の第20回天文宇宙検定1級を受験したものです。
問題文には、「図はHα線の自発遷移(自発放射)を表す模式図である。(後略)」とありますが、記載の図はE2からE1への遷移となっており、これはライマンα線を表しているのではないのでしょうか。
テキスト『極・宇宙を解く』には、Hα線はE3からE2への遷移との記載があり、そのように理解しておりました。
自分の理解に誤りがありましたら、教えていただきたいです。
【回答】
結論から申し上げますと、ご指摘いただいたとおり、
Hα線の定義(n=3 から n=2 への遷移)は科学的に正しく、公式参考書の記述とも矛盾いたしません。
そのうえで、今回の問題図の意図について補足説明をさせていただきます。
公式参考書『極・宇宙を解く』掲載図は、 横に具体的な量子数(n=1, 2, 3…)を記入し、
エネルギー準位の間隔もある程度厳密に表現した「説明図」です。
この場合、ご質問にある通り E3→ E2 がHα線に対応します。
一方、本設問で提示した図はすべての準位を並べた説明図ではなく、あくまでも2つの準位を描いた模式図で、
上の準位(仮にE2と置いたもので第一励起状態を意味していません)から、
下の準位(E1は基底状態を意味していません)に、外からの放射がなく自然に遷移する自然放射を表しています。
『極・宇宙を解く』の図は、横に量子数を記入した説明図で、準位の間隔もある程度は合わせてあります。
番号があるため混乱されたかもしれないのですが、説明図と模式図の違いだとお考え下さい。
テキストの正確な知識を基に細部まで確認し、受験していただいたことに深く敬意を表します。
**************************************************
