第9回の試験問題について、ご質問をお寄せいただき有難うございました。
以下に、3級・問49の試験問題の誤植訂正のご報告と、
1級・問27についてお寄せいただいた、複数の方からのご質問について回答申し上げます。
●3級・問49の誤植訂正
【問題文】
2019年はドミトリ・メンデレーフが元素の周期律を発見してから150周年にあたる。
次の中で名前の由来が太陽に関係する元素を選べ。
①セレン(Se)
②ヘリウム(He)
③サマリウム(Sm)
④セシウム(Cs)
【正解】 ②
【解説】
①セレンの由来は月の古代ギリシャ名セレーネ。
②ヘリウムは古代ギリシャ語の太陽=ヘリオスが由来で正解。
③サマリウムは当該元素が発見された鉱物、サマルスキー石が由来。
④セシウムはラテン語で青が由来。
【誤植訂正】
試験問題用紙の選択肢③「サマリウム(Sa)」は「サマリウム(Sm)」の誤りでした。
訂正してお詫び申し上げます。
●1級・問27:質問への回答
【問題文】
イベント・ホライズン・テレスコープ・プロジェクトが、
2019年4月、ブラックホールの直接撮像に成功した。
次のうち誤っているものを選べ。
①離れた望遠鏡間のデータを比較するほど解像度がよくなるため、
地球上の各地の電波望遠鏡を用いて同時観測を行った
②銀河系中心の超巨大ブラックホールは、M 87のブラックホールに比べて
質量が小さいため変動が大きく、2019年8月現在、まだ確実な撮像ができていない
③ブラックホールの周囲の天体が放つ光が、ブラックホールで曲げられて、
リング状に光るように見えると考えられる
④光るリングの内側の端の部分が、ブラックホールの事象の地平面
(イベント・ホライズン)である
【正解】 ④
【解説】
イベント・ホライズン・テレスコープ・プロジェクトが、直接撮像に成功したのは、
M 87銀河系の中心にある超巨大ブラックホールで、リング状に光る天体だった。
光るリングのすぐ内側がブラックホールなのではない。
もし、ブラックホールが回転していないのならば、光が安定に周回できる円軌道の半径は、
ホライズン半径の1.5倍より外側である。
【質問】
イベント・ホライズン・テレスコープの問題について質問です。
ブラックホールの直接撮像のリングは「周囲の天体が放つ光」だけではなく、
降着円盤からの光もあるのでは?
また、ブラックホールの近くに存在するガスが放つ電波も、
天体が放つ光となるのでしょうか。
選択肢の③、④共に誤りだと思うのですが?
(質問文は一部要約しています)
【回答】
ご質問いただき、ありがとうございます。
結論から申しますと、記述内容に誤りがあるのは、選択肢④のみで、
選択肢③の記述に誤りはありません。
まずは、国立天文台が撮像の記者発表と同時に公開した、
メカニズム説明の動画を見ていただければ、ご理解いただけると思います。
●国立天文台ホームページ:史上初、ブラックホールの撮影に成功
https://www.nao.ac.jp/news/sp/20190410-eht/videos.html
次に、選択肢③についてですが、
今回公開されたブラックホールの画像がぼやけているため、
その広がった部分が降着円盤であると考えておられる方が見受けられます。
たしかに、M87中心のブラックホール周辺には、
おそらくは非常に希薄な降着ガス流が存在していると考えられますが、
降着ガス自体は希薄すぎて、今回、電波画像として検出できていません。
つまり、今回公開された画像では、降着ガスから放射された電波が、
ブラックホールの重力で曲げられ、
円形の光子リングへ収束されて遠方に届いたものを観測しています。
光子リングは、本来は細いですが、電波画像ではぼけてしまって、
幅広のリボンのようにみえています。
次の画像(Thorneらの理論シミュレーションの論文より)で説明するならば、
中央の黒い領域を取り囲む細い円形のリングが今回観測されたものです。
M87銀河ではもともとガスの量が非常に少なく、ブラックホール周辺に存在するだろう降着ガスは
希薄過ぎて電波画像としては検出されていません。
ただし、降着ガスのさまざまな場所から放射された光(電波)が収束して
強められた光子リングは検出されたのです。
したがって、希薄で検出はできなかったですが、ブラックホール周辺には
“降着ガス流”という天体が存在していると考えてよいです。
最後となりましたが、ご質問とは別に、本問題文では、
「イベント・ホライズン・テレスコープ・プロジェクトが、
2019年4月、ブラックホールの直接撮像に成功した。」
となっていますが、記者発表が4月であり、実際の撮影は2年前です。
問題文に誤りがありましたことを訂正し、お詫び申し上げます。