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〇第15回試験問題へのご質問に対する回答

第15回試験問題について、いくつかのご指摘・ご質問を頂戴いたしました。ありがとうございます。
以下のとおり、回答申し上げます。
質問者からの文章は、一部を割愛させていただきました。ご了承ください。

■2級・問35
【問題】
次の4つの元素合成のうち、地球に存在する鉄より重い元素が合成された可能性のあるものはいくつあるか。

・ビッグバン時の元素合成
・星の内部での元素合成
・超新星爆発時の元素合成
・中性子星同士の合体時の元素合成

①1つ
②2つ
③3つ
④4つ

【正答】

【解説】
ビッグバン時の元素合成では、水素とヘリウム、およびわずかなリチウムしか合成できない。
星の内部では、鉄までの元素しか合成できない。
超新星爆発時には、その膨大なエネルギーにより、鉄より重い元素も合成できると考えられている。
また、中性子星同士の合体では、電気的な反発のない中性子を素早く捕獲するというRプロセスにより、金やプラチナなどのr過程元素がつくられ、宇宙空間にまき散らされた可能性が高いことが明らかになってきた。
したがって、この4つの元素合成のうち鉄より重い元素を合成できるのは、超新星爆発時と中性子星同士の合体のときの2つとなり、②が正答となる。

【質問】
・選択肢③が正答ではないか。
地球に存在する鉄より重い元素が合成された可能性のあるもの」との問いに対して、解答と解説では「超新星爆発時の元素合成」と「中性子星同士の合体時の元素合成」の2つのみが可能性があるものとして選択肢②を正解とされていました。
津村先生の解説動画も拝聴しましたが、これには首を傾げざるを得ません。

候補とされた元素合成のうち「ビッグバン時の元素合成」は論外として、問題は「星の内部での元素合成」です。
この文言を見る限り、核融合による元素合成と中性子捕獲による元素合成の両方を当然に含むものと考えます。確かに解説動画でも説明された通り、核融合では鉄より重い元素は合成されません(されてもすぐ鉄になる)。

しかし、中性子捕獲による元素合成のうち「s過程」と呼ばれるものであれば、鉄よりも重い元素は合成されます。s過程で合成された元素はAGB星中心核の外殻で起こるヘリウム殻フラッシュで外層へ運ばれ、外層の水素とともに星間空間へと放出され、また新たな恒星の材料とされます(「s過程」日本天文学会編『天文学辞典』)。
そして、太陽系にあるs過程の核種の生成には、漸近巨星分枝星(AGB星)内部で起こるs過程が主に寄与しているとされています(望月優子・佐藤勝彦「元素の起源」、シリーズ現代の天文学 第1巻『人類の住む宇宙』第2版 3章7節)。
これらを総合すると、問題文にある「地球に存在する鉄より重い元素が合成された可能性のあるもの」という条件に「星の内部での元素合成」も合致するものと思われます。

【回答】
ご質問をいただき、ありがとうございます。
ご指摘のとおり、星の内部でも鉄より重い元素が作られることがあります。
「星の中の核融合反応では鉄までしか作られず、鉄より重い元素は作られない」というのは正しいのですが、星の中の核融合反応ではなくて、中性子捕獲反応によって、鉄よりも重い元素が作られます。
中性子捕獲反応には、s過程(スロープロセス)というゆっくりとしたプロセスと、r過程(ラピッドプロセス)という早いプロセスの2つの反応があります。解説や2級解説動画で紹介した超新星爆発や中性子星連星の合体では、r過程が起こっていますが、s過程の方は星の中で起こります。
ご指摘にあるとおり、実際に宇宙で起こっている反応では鉄より重い元素が星の内部でも一部作られるパスは存在する事実がありますので、星の中でも、鉄よりも重い元素は、作られうるということで、本問の正答は「③3つ」とするのが正しいといえます。
しかし、ご質問者から頂戴した質問内容は、高校地学レベルを基準とする2級の水準と比して、高度で発展的な内容であり、2級公式テキストでは言及しておりません。試験は、公式テキストを出題範囲と指定していますので、2級公式テキストに書かれてあることだけを理解して試験にのぞむと、正答は「②2つ」となります。
検定委員会にて慎重に審議しました結果、本試験では、「②2つ」と「③3つ」の2つを正答とすることといたします。

ご指摘いただきました内容は、テキスト改訂時の参考とさせていただきます。なお、解答速報・2級解説動画に反映をして説明を補足いたしました。
貴重なご意見をありがとうございました。

■2級・問40
【問題】
生物種の5回の大量絶滅を表す次の図で、O/S境界はどれか。
①A
②B
③C
④D

【正答】

【解説】
O/S境界はオルドビス紀とシルル紀の境界。
なお、BはF/F境界、CはP/T境界、DはT/J境界、EはK/Pg境界と呼ばれる。
例外もあるが、おおむね、境界を挟む“紀”の頭文字が使われている。

【質問】
解答は①ですが、そもそもこの問題は理解できないところがあります。
問題にはA,B,C,D,Eとありますが、選択肢には①A②B③C④Dとあります。
問題にEは必要ないと思います。
問題として成立していないのではないでしょうか?

【回答】
ご質問をいただき、ありがとうございます。
問題文に「生物種の5回の大量絶滅を表す次の図で」とございますとおり、図中のA、B、C、D、Eが示しているのは、カンブリア紀以降に5回起きた生物種の大量絶滅の時期です。
当試験は四択ですので、正答ではないEのK/Pg境界は選択肢から外しておりますが、
5回のうちの1回のため図には残しました。

■2級・問57
【問題】
地球誕生時から現在までの地球大気について述べた文のうち、間違っているものはどれか。

①地球が誕生したとき、地球大気のほとんどは二酸化炭素であった
②窒素は、地球誕生時から現在までほぼ同じ量を保っている
③地球大気の酸素は、光合成生物によってつくられた
④光合成生物によってつくられた酸素は、ただちに大気中に拡散して酸素の量を増やしていった

【正答】

【解説】
生命は海中で発生して進化していったが、太陽の強烈な紫外線のため、地上では生息できなかった。この生物の中から光合成生物が発生し、酸素を海中に放出するようになった。しかし、放出された酸素は、海中の鉄イオンと反応して酸化鉄となり、大気中にはなかなか拡散できなかった。大気中に拡散するようになったのは、海中の鉄イオンがなくなってからであり、光合成生物が出現してからおよそ10億年後のことである。したがって、「ただちに大気中に拡散して」という記述の部分が誤りで、④が正答となる。①~③は正しい記述である。
なお、地球誕生時に大量にあった二酸化炭素は、地球に海が誕生し、海中に溶けた二酸化炭素が海中のカルシウムイオンと反応して炭酸カルシウムになり、海底に沈殿していった。そのため、大気中の二酸化炭素は徐々に減少していった。海底に沈殿した炭酸カルシウムは、堆積して石灰岩に変わっていった。

【質問】
問57の解答は④になっていますが。②も間違っているのではないでしょうか。
②窒素は、地球誕生時から現在まで同じ量を保っているとありますが、始生代(約35億年頃)は減少しています。この減少はほぼ同じ量を保っているとは理解しにくいです。

【回答】
ご質問をいただき、ありがとうございます。
2級公式テキストp.145 図表10-10 の縦軸は対数値なので、35億年ごろにおける窒素分圧の減少は見かけよりは大きいですが、それでも、2倍程度の変化に留まっており、桁で変化しているわけではありません。また、このような測定値や推測値には常に不確定性を含んでいます。不確定性の評価の観点も含め、窒素分圧は、“ほぼ同じ”とか“あまり変わっていない”などと表現して差し支えないかと思います。それに対して、この図に示されている他の元素(二酸化炭素、酸素、アルゴン)は、それぞれ桁違いに変化していますので、それらの元素の変化に比べ、窒素はほぼ一定としても差支えはないと思います。