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○第9回天文宇宙検定受験者データおよび講評

○第9回天文宇宙検定(2019年10月20日開催)


●最年少受験者

1級 11歳
2級 8歳
3級 6歳
4級 4歳

 

●最高齢受験者

1級 74歳
2級 81歳
3級 83歳
4級 86歳

※年齢は受験申込時に受験者本人様に提出いただいた情報によります

 

●受験者男女比率

1級:男性 84.3%、女性 15.7%
2級:男性 63.9%、女性 36.1%
3級:男性 60.7%、女性 39.3%
4級:男性 57.8%、女性 42.2%

 

●合格率

1級:7.0%
2級:40.0%
3級:81.1%
4級:83.0%

 

●最高得点

1級:84点
2級:98点
3級:99点
4級:100点(2名)

 

●平均点

1級:53.7点
2級:63.5点
3級:70.0点
4級:71.9点

 

〇第9回天文宇宙検定講評

■4級

受験者数が徐々に伸びている4級。今回も10代未満・10代の若年層が4級受験者に占める割合は5割を超えた。
今回は合格率が上がり、全体でも80%を超えたが、10代未満の合格率は71.3%と前回54.3%を大きく上回った。また、90点以上の高得点獲得者は、受験者の1割を超えた。20代、30代女性の受験者がやや減少したが、30代女性の合格率は100%、40代女性は92.7%と健闘した。
正答率が高かった問題は次の4問。【問33】地球がどの天体の種類にあてはまるかを問う問題(正答率98.0%)、【問11】環をもたない惑星を選ぶ問題(正答率95.6%)、【問22】ほうき星と呼ばれる天体を選ぶ問題(正答率93.3%)、【問35】北緯35°での太陽の見える角度を問う問題(正答率93.3%)。
正答率が低かった問題のうち、正答率が4割以下だったのは次の3問。【問4】三大流星群でないものを選ぶ問題(正答率25.7%)。しぶんぎ座流星群(1月4日ごろ活動が最も活発になる)を選んでしまった方が5割以上だった。この問題は第5回試験でも出題されたが、その際も正答率は26.2%と低かった。次に正答率が低かったのが【問6】アンドロメダ銀河、大マゼラン雲、小マゼラン雲のうち、肉眼で見える銀河の数を問う問題(正答率33.1%)。肉眼で見られる銀河は3つ全てであるが、そのうち日本から見られるのは1つだけ(大マゼラン雲、小マゼラン雲は天の南極の近くにあるので日本では見られない)なので、勘違いしてしまった方がいたようだ。次に正答率が低かったのは【問5】おうし座にある、すばる(プレアデス星団)の位置を問う問題(40.0%)。すばるは、おうしの背中の部分に見えるが、おうしの顔の部分に見えるヒアデス星団の位置と間違ってしまった方が多かった。
また、星座早見盤の東西南北の表記に関する問題【問21】は過去に出題されており、問題集にも掲載されているが、正答率はあまり高くない(63.0%)。星座早見盤は空にかざして使うため、東西が逆に描かれていることに注意しよう。公式テキスト4章には季節ごとに見やすい星座が紹介されている。ぜひ公式テキストや星座早見盤を片手に、実際に夜空を見上げて星座を探してみてほしい。

 

■3級

今回は3年ぶりに合格率が80%を超え、平均点も70点となった。特に10代~20代、50代~60代の合格者が増加した。3級や4級の試験会場では、親子で、または孫と一緒に受験、という姿も多く見られた。
正答率が高かった問題は次の3問。【問15】彗星と関わりの深い現象を選ぶ問題(正答率95.6%)、【問34】星の正式名に付けられたギリシャ語のアルファベットの意味を問う問題(正答率95.4%)、【問20】夏の大三角を構成する星を選ぶ問題(正答率94.6%)。
正答率が極めて低かったのが【問56】探査機が着陸したことのある衛星をもつ天体を問う問題(正答率15.1%)。火星を選んだ受験者が約7割と圧倒的に多かった。「探査機が着陸したことのある惑星」を問うているわけではないことに注意。次に正答率が低かったのが【問12】天文学において使われない座標を問う問題(正答率21.6%)。赤道座標や銀河座標を選んでしまった方が多かった。2019~2020年の公式テキストから新しく加わった内容(2章コラム)だが、重要なので、もう一度整理しておこう。次に正答率が低かったのが、【問6】離心率の最も大きい太陽系惑星を問う問題(正答率22.2%)。海王星を選んだ方が多かったが、むしろ海王星は金星に次いで離心率は小さい。
今回は、2019年に2度のタッチダウンを成功させた「はやぶさ2」に関連する問題が2問出題された。【問9】表面に着地することを表す言葉を問う問題(正答率83.2%)と【問23】小惑星リュウグウの写真を選ぶ問題。【問23】の正答率は44.5%とあまり芳しくなく、小惑星イトカワの写真を選んでしまった方が4割近くいた。コマやそろばんの玉のような形と報じられたリュウグウ。公式テキストだけでなく、時に新聞や天文雑誌に目を通してみることも、合格への一助となるだろう。

 

■2級

例年3級の受験者が最も多いが、今回は2級の受験者数が3級を上回った。3級から2級は難易度がぐんと上がるが、今回は10代でチャレンジされた方が増えた。全体の合格率も40.0%と昨年(29.2%)を大きく上回った。2級までの出題範囲は公式テキストの記述内容からであり、過去問の類似問題も多いので、公式テキストや問題集を隈なく読み込んで試験に臨もう。
正答率が9割をこえた問題は、次の3問。【問43】小惑星帯に関する正しい記述を選ぶ問題(正答率93.1%)。【問54】天体の色について、間違った記述を選ぶ問題(正答率91.9%)。【問47】規模の似た2つの銀河が衝突するとどのようなことが起きるかを問う問題(正答率91.4%)。以上3問は過去に類似問題が出題されたことがある。
正答率が特に低かった問題は次の4問。【問59】小惑星リュウグウにない地名を選ぶ問題(正答率25.1%)。キンタロウクレーターを選んだ方が多かった。オトヒメというクレーターはないが、最も大きい岩は「オトヒメ岩塊」と命名された。【問26】多くの渦巻銀河で見られる輝線のスペクトルの模式図を選ぶ問題(正答率28.6%)。正答は①だが、③と迷われた方が多かったようだ。これは公式テキスト6章4節からの応用問題である。【問58】『明月記』の客星の記載を欧米の天文学者に紹介した人物を問う問題(正答率29.2%)。正答は、アマチュア天文家の射場保昭であるが、著名な天文学者を選んでしまった方が多かった。【問32】2018年に打ち上げられた太陽探査機を問う問題(正答率29.8%)。日本の太陽観測衛星「ひので」を選んでしまった方が多かった。「ひので」打ち上げは2006年で、すでに多くの観測成果をあげている。

 

■1級

1級受験者は、今回も男性が8割以上であり、男性は50代と60代、女性は30代が多かった。昨年の合格率は0.8%とこれまでで最も低い合格率であったが、今回はぐっと増えて7.0%となった。得点のピークは50点台で、あと一歩で準1級という方が多かった。最高得点は84点と過去最高であった。今回は時事問題がごくわずかに多めであったため、話題のニュースをこまめにチェックしている方は正答を導きやすかったのかもしれない。
正答率が8割以上だった問題は次の4問。【問21】探査機「イカロス」の推進法を選ぶ問題(94.8%)。【問25】種族Iの恒星に重元素が多い理由を選ぶ問題(89.6%)。【問15】ギリシャ文字「ロー」を選ぶ問題(87.0%)。【問18】天体ニュートリノの発見でノーベル物理学賞を受賞した人物を選ぶ問題(85.2%)。
正答率が特に低かったのは【問24】宇宙における星の分布は平たい円盤状になっているのではないかと最初に提唱した人物を選ぶ問題(10.4%)。ウィリアム・ハーシェルを選んだ方が多かったが、ハーシェルが天の川銀河(銀河系)の円盤構造を論文で発表したのは、1785年のこと。次に低かったのが【問19】銀河の赤方偏移サーベイによって作成された銀河の分布図で見られる、地球からの視線方向に伸びた構造の呼び名を選ぶ問題(17.4%)。大スケールにおける赤方偏移変形である「カイザー効果」を選んでしまった方が多かった。時事問題で正答率が低かったのは【問6】アメリカの新型宇宙船に乗るために訓練を開始した日本の宇宙飛行士を選ぶ問題(22.6%)。直近にISSに滞在していた金井宣茂宇宙飛行士を選んだ方が半数以上いた。
なお、1級公式参考書『超・宇宙を解く』に掲載された図を使った出題は、【問7】(77.4%)、【問10】(74.8%)など正答率は70%を超えた。今年の1級試験からは、2月に発刊する『極・宇宙を解く』(『超・宇宙を解く』の改訂版にあたる)を公式参考書に採用する。4割程度はこの参考書より出題されるので、今回の試験同様、しっかり読み込んでおくことをおすすめする。

 

■総括

第8回に引き続き、第9回検定試験も全国10カ所の会場で行われた。各試験会場の運営にご協力いただいた皆様には心より御礼申し上げる。
試験終了後には、東京・名古屋・大阪会場で答え合わせ会が開催された。多くの受験者にご参加いただき、熱心で活発な質疑応答も行われた。
今回も幅広い年齢層の方々に挑戦していただけた。今回は、4級・3級・2級そして1級すべてで、合格率が上がった。とくに1級の合格率が大きく上がった。非常に喜ばしい限りである。
さて、例年の総括同様、まず、本検定のココロから復習すると、本検定は天文や宇宙に関わるあらゆるモノゴトについて、知識を蓄え、本質を理解し、そして徹底的に楽しんでいただきたくことが目的である。定員の決まった大学の入学試験などでは仮に成績がよくても定員を超えた受験者を“落とす”わけだが、本検定の場合は基準を超えた受験者を“合格”させるものだ。原理的には全員が合格という可能性もある。本検定も10年近く続いており、どうしても過去問との類似問題も増えてきてはいるが、各級における問題の難易度自体は一定の水準で保たれている。したがって、今回、全体的に合格率が上がったということは、受験者のみなさんが公式テキストや過去問をしっかり勉強してこられたことを意味しており、実施する側としても非常に嬉しいわけである。
ところで、過去問を含め、4択という条件はあるものの、検定問題にはいくつかのタイプがあることはご存じだろうか。圧倒的に多いのは、基礎的な知識やトリビアな知識そして最先端の知見など、知識の内容を尋ねる単純な文章題である。天体画像やグラフを読み解く画像・図形問題もある。そして簡単な計算や数式の意味を考える公式・計算問題がある。作成側としては、図形問題や計算問題はなかなか作成に手間がかかるので、どうしても単純問題へと流れがちである。一方、受験者側としても、単純な問題の方が覚えやすく、図形問題や計算問題は取っかかりが難しいだろう。ただ宇宙に関する多種多様な知識を暗記するだけ、というのは本検定の本意ではなく、その先、種々の知識を基礎として宇宙をより深く理解し愉しんで欲しいのが本意である。その観点からは、あれこれと考える問題を出題し、また受験者に解いていって欲しいと思う。
また天文や宇宙の分野は本当に日進月歩である。この1年ほどの間にも、ブラックホールシャドー発見の報はあり、はやぶさ2が小惑星リュウグウへタッチダウンし、重力波源や系外惑星はその数をますます増やした。公式テキストは2年毎に改訂されており、運良く昨年に改訂された2級と3級の公式テキストには入れ込むことができたが、間に合わないことも少なくない。いずれにせよ、本検定のための勉強を支えに、最新の発見などにも触れ、公式テキスト以外にも視野を大きく広げて欲しい。
最後に、今回は若年層の受験者が伸びているようである。4級の合格者が3級へ進み、3級をクリアしたら2級へ挑み、そしてついには高難易度の1級へチャレンジして欲しい。そして、その間には天文や宇宙の最先端も拡がり、それとともに公式テキストも改訂され、ともに末永く先へ先へと進んでいただきたいものである。

2020年2月吉日
天文宇宙検定委員会

  
 
   
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