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第7回天文宇宙検定受験者データおよび講評

○第7回天文宇宙検定(2017年10月22日開催)


●最年少受験者

1級 10歳
2級 7歳
3級 7歳
4級 5歳


●最高齢受験者

1級 72歳
2級 83歳
3級 84歳
4級 92歳

 

●受験者男女比率

1級:男性 79 %、女性 21 %
2級:男性 65 %、女性 35 %
3級:男性 55 %、女性 45 %
4級:男性 56 %、女性 44 %

 

●合格率

1級:5.3%
2級:45.1%
3級:69.7%
4級:83.2%

 

●最高得点

1級:77点
2級:97点(2名)
3級:96点
4級:98点(3名)

 

●平均点

1級:49.6点
2級:65.1点
3級:65.6点
4級:72.5点

 

○第7回天文宇宙検定講評

■4級

回を追うごとに、10代未満・10代の若年層の比率が高まっており、今回は4級受験者の55%を占めるに至った。
合格率についてみると、前回(85.8%)よりも若干下がり、83.2%。世代別の合格率は、30代:95.0%、40代:94.4%、50代:88.9%、60代以上:100%。大人世代の面目躍如といった印象だ。ちなみに、若年層の合格率は、10代未満:70.2%(前回より11.9%減)、10代:80.5%(前回より4.1%増)、20代:79.2%(前回より13.7%減)であった。
正答率の高かった問題をみてみると、【問33】人の目で、部分日食を見るときに使う道具を問う問題(正答率97.5%)、【問25】オーロラの発生原因を問う問題(正答率96.7%)、【問20】写真のなかから銀河を選ぶ問題(正答率:96.5%)がベスト3であった。 一方、【問24】月探査の歴史について、探査機の実績から誤りを見つける問題(正答率31.4%)のように設問・選択肢の文が長くなると正答率が下がる傾向が年少者に見られた。単に知識を問う問題であれば、記憶力で大人と変わらない強さを発揮する年少者も、小学5・6年生の受験を想定して作問されている4級の試験問題では、少々力が及ばない様が例年見て取れる。他にも、【問4】自転周期が最も長い太陽系惑星を問う問題(正答率33.2%)では、④天王星を選択した方が約4割いた。公転周期と勘違いしたのかもしれない。また、【問27】(正答率36.7%)のようなギリシャ神話からの出題はほぼ恒例となっているが、毎回正答率がいまひとつ伸びないのは残念である。

 

■3級

10代・20代の受験者が多い傾向は、今回もそのまま。60代以上の受験者は5.1%。「頭の体操のために勉強して受験した」というアンケート回答も多く寄せられており、当検定はまさしくうってつけと思われるのだが、年配の方々に広く告知する策について運営側も頭を悩ませている。
合格率をみてみよう。3級全体の合格率は、69.7%。前回(81.8%)と比べると大きく下がっている。得点分布をみると、50~59点に3級全受験生の約20%が属しており、あと一歩及ばなかった方々が前回よりも多かった。
今回、正答率の低かった問題には天文学史の問題が多い。試験問題は3級テキストの全章からまんべんなく出題しているが、今回は、天文学史の問題に難問が多かったことが、得点が伸びなかったことに影響しているのかもしれない。【問34】宇宙開発の歴史のなかで一番早かった出来事を問う問題(正答率:27.6%)。【問54】ガリレオが天体を観測し発見したものでないものを問う問題(正答率:28.6%)、【問48】種子島への鉄砲伝来と同時期の天文学史上の出来事を選ぶ問題(正答率:31.8%)。正答率ワースト3が全て天文学史の問題であった。望遠鏡が発明されて400年ほど、人工衛星の打ち上げ成功からは60年ほどしか経っていない。宇宙と人類とのかかわりを時系列で正しくとらえられているかは、狙われやすい問題といえるだろう。
一方、正答率の高かった問題は、基礎的な定番問題が多かった。【問44】図がどこの宇宙観を表したものかを問う問題(正答率:95.9%)。【問35】天体現象のなかで起きないものを選ぶ問題(正答率:95.9%)。【問19】日本から見た太陽の動きを表わす図から春分・秋分・夏至・冬至を正しく示しているものを選ぶ問題(正答率:92.1%)である。基礎的な知識にさらなる積み重ねがあれば、昨今の宇宙関連ニュースを見聞きしても、さらに深い愉しみが得られるだろう。

 

■2級

今回の合格率は、45.1%(前回は63.8%)と大きく下がった。得点分布をみると、60~69点に20.4%が位置しており、こちらも3級同様に、あと一歩の方が多かったとみられる。
天文学史の問題の正答率の低さが目立つ点も3級と同様で、正答率ワースト3は以下の問題である。【問50】現在の天体物理学誕生の契機となった科学史上の業績を問うもの(正答率:8.2%)。【問32】火星地表での探査画像から、撮影した探査機を選ぶもの(正答率:13.5%)。【問54】金星の最大光度の頃の太陽・地球・金星の位置関係を図から問う問題(正答率:22.6%)。【問54】は、最大離角の頃がもっとも明るいと思い込んで、②を選んだ方が非常に多かった。
正答率の高かった問題は、【問20】系外惑星に生命が存在するために、現在もっとも重要な条件と考えられているものを選ぶ問題(正答率:95.5%)。【問2】太陽の黒点が周囲の光球よりも温度が低い原因を問う問題(正答率:90.5%)であった。4級から2級までの問題は、公式テキストを読み込めば合格できるように作られているが、2級となると、応用問題でつまずく受験者も少なくない。テキストだけなく、普段から天文関連書籍を読んだり、科学関連ニュースに目を通しておくと解答につながるヒントがみつかるだろう。

 

■1級

今回は、設問のうち4問が、問題として成立せず全員正解扱いとなった。今後の試験運営の課題として重く受け止め、この場を借りて、改めて深くお詫び申し上げます。
今回の1級合格率は5.3%。得点分布のピークは、40~49点が37.7%。50点~59点が32.5%。準1級の合格点となる60点以上70点未満は、1級受験者の9.6%であった。受験者数でみると、前回よりも、1級受験者数は2倍となった。特に、10代・20代の受験者が増えている。1級は難関で、合格者は40代以上がほとんどだが、若者のチャレンジ精神を称えたい。1級試験は過去6回開催されたが、女性で1級試験に合格され、天文宇宙博士の称号を手に入れられた方は、未だにおひとりのみである。
正答率の高かった問題を見てみよう。【問3】超新星の型で、見かけの等級から超新星までの距離が推定できる型を選ぶ問題(正答率:84.2%)。【問20】図示されたクェーサー3C 273のスペクトルから、その赤方偏移を問う問題(正答率:82.5%)。これらは、1級参考書である『超・宇宙を解く』を理解していれば、正答にたどり着ける問題である。
正答率の低かった問題は意外にも、【問33】月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に日本から唯一参加しているチームの日本初の月面探査ローバーの名称を問う問題(正答率:10.5%)であった。続いて、【問22】オリオン座付近の可視光の画像に星間ガスの分布をプロットした図から、星間ガスが何で観測したものかを問う問題(正答率:15.8%)であった。

 

■総括

個々のデータについては各級の講評のとおりだが、全体を見渡して気づくのは、(1)本検定の受験者が下は10歳未満から上は90歳以上まで、非常に幅広いスペクトルを示すこと。(2)受験者数のピークは10代と40代にあること(30代で少し下がるのは子育て世代のためだろうか)。(3)ただし、合格率は年齢によって極端に違わないこと。そして(4)女性の比率が多いこと。などが見て取れる。本検定も7回目を迎えて、それなりに広く定着してきた結果だろう。一方で、問題ミスが残る点については、作成者がより一層の注意をしなければならないと反省している。
さて、例年の総括にも書いてあることだが、本検定のココロは天文や宇宙に関わるあらゆるモノゴトについて徹底的に楽しんでいただきたいことに尽きる。そのため公式テキストは、単なる知識の羅列ではなく、驚くような宇宙の謎や予想外の知見そして最先端の発見などを、できるだけわかりやすく紹介する方針で執筆している。そして検定問題についても、当初は、斜め上をいくような意外な問題や、多少非常識でも興味深い問題を用意できればと考えていた。しかしながら、実際に7回まで進めてみると、やはり“試験”という観点からは厳格性が要求されるため、正確な知識を問う問題など当たり障りのない問題に落ち着きがちで、監修サイドでみて面白い問題があまり多くないのが残念なところだ。実際、監修サイドで面白いと思った問題は、最先端の話題や未知の問題などで、解答が単純な4択で定まらなかったりする。問いかけの仕方を工夫するなどして、より興味深く斜め上を行くような問題も出題するのが今後の大きな課題だろう。出題側も受験者の方々も楽しめるような天文宇宙検定に成長させていきたいものである。

2017年12月吉日
天文宇宙検定委員会

  
 
   
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