公式ブログ

全ての記事一覧

第13回天文宇宙検定 受験者データおよび講評

2022年5月29日に開催した第13回試験について、合格率・平均点などの受験者データと、検定委員会による講評をアップしました。
「第13回天文宇宙検定解答速報」と合わせてご覧ください。

第13回天文宇宙検定(2022年5月29日開催)

●最年少受験者
1級・準1級 10歳
2級 7歳
3級 7歳
4級 5歳

●最高齢受験者
1級・準1級 73歳
2級 89歳
3級 75歳
4級 67歳

●受験者男女比率
1級:男性 67.5%、女性 32.5%
2級:男性 67.4%、女性 32.6%
3級:男性 46.4%、女性 53.4%
4級:男性 53.4%、女性 46.6%

●合格率
1級:3.9%
2級:48.7%
3級:71.6%
4級:81.0%

●最高得点
1級:77点
2級:96点
3級:97点
4級:98点(2名)

●平均点
1級:47.7点
2級:67.3点
3級:67.1点
4級:70.8点

 

○第13回天文宇宙検定講評

■4級
今回の4級試験の合格率も前回同様に80%を超えた。10歳未満と10代で4級受験者の5割を超え、親御さんと家族で受験されるほほえましい風景も馴染みのものとなってきた感がある。合格率だけをみると、10歳未満では7割を切っており、小学校低学年にはなかなか手ごわい試験であることには変わりはないように思われる。受験者の男女比は今年も見事にほぼ半々であった。

さて、4級試験で正答率が9割を超えた問題は1以下の2問だけであった。
【問3】日本において、1年のうちで一番夜が長い日を問う問題(正答率93.2%)。正答は「冬至の日」。祝日になる春分・秋分の日に対し、夏至・冬至は日常生活でなじみの薄い日かと思われるが、4級では頻繁に出題される定番問題ゆえか、高い正答率となった。

【問13】まっすぐうでをつき出だして、じゃんけんのグーをしたときのにぎりこぶしの角度は約何度か?という問題(正答率90.1%)。正答は約10°。試験問題にも図が添えられているが、『4級公式テキスト』では、星空観察をするときに便利な手を使って角度を測る簡単な方法をいくつか紹介している。これを知っていれば、キャンプなどで友だちに星座を教えるのも「こぶし1個分(10°)上の星」などと教えられる。

4級で唯一、正答率が2割を下回った問題は以下の問題。
【問22】宇宙人へのメッセージとして、男女の絵がえがかれた金属プレートをつけて、今も宇宙を旅している探査機の名前を問う問題(正答率17.3%)。正答はパイオニア10号。4級は10代の受験者が過半数で、50年も前に打ち上げられた探査機の名前は混同しやすいのか、回答は割れてしまい、正答率が低かった。

そのほか正答率が低かった問題としては、【問30】太陽の自転速度について正しいものを選ぶ問題(正答率34.7%)。正答は北極・南極付近で約30日、赤道付近で約25日。太陽が巨大なガスでできているので、赤道付近の方が回転が速いことを理解していれば正解をみちびくことができる。

次に正答率が低かったのは【問19】プレアデス星団などの散開星団についての正しい記述を選ぶ問題(正答率44.9%)。正答は、「星雲のなかでいっせいに生まれたきょうだい星たちである」。すばるという名前でも有名なプレアデス星団は比較的若い星々がいっしょに生まれたきょうだいであると知ってみれば、ただ『きれいだなぁ』とみるだけで終わるより感じ方も違ってくるのではないだろうか。すばるは、肉眼でもぼんやりと星が集まっているのがわかる星団。星空がきれいなところへ冬に出かける機会があったらぜひ探してみてほしい。さらに、双眼鏡でみると星がぎゅっと集まって輝いているのをとらえられる。プレアデス(すばる)については美しい姉妹のギリシャ神話も有名。オリオンのわがままぶりが描かれているお話のひとつだ。興味があればぜひ読んでもらいたい。

 

■3級
前回、前々回と80%前後であった合格率が、今回は70%前半まで下がった。今回は10代・20代の受験者が5割を超え、例年、合格率の高い実年層の受験者が少ないという受験者構成が影響したのかもしれない。10歳未満の合格率は52.4%、10代の合格率は58.4%と低調であった。3級受験者の男女比は女性が若干高めであることは変わらなかった。

正答率が9割を超えた問題は、次の3問。
【問12】月がどのようにしてできたのかについて、現在、一番有力とされている説を問う問題(正答率94.6%)。親子(分裂)説、捕獲説、双子説、巨大衝突説など数ある中で、巨大衝突説が最有力とされている。しかし、近年は複数衝突説なども有望視されているそうだが、謎は多く、今後の論争の行方が注目される。

【問44】皆既月食中の月が「赤い月」となるのはなぜか(正答率92.0%)。正答は、「地球の大気を通過した太陽光に照らされるから」。地球大気を通過する際に太陽光の青い光が散乱され、残った赤い光が照らすからであるが、その際、月から地球をみると地球による日食がみられるという。

【問17】1984年公開の小松左京原作の映画『さよならジュピター』のジュピターとはどの天体かを問う問題(正答率90.9%)。惑星のさまざまな言語での呼び名については3級で学ぶが、身の回りを見わたすと、会社名・化粧品名・アニメキャラクターなどいろいろなものにその名が冠されていることに驚くだろう。

次に、正答率が3割を下回った問題は以下の3問であった。
【問34】平均太陽日と恒星日は、1日につき、何分の違いがあるか(正答率20.2%)。正答は、④平均太陽日が恒星日より約4分長い。ほんのわずかの差であるが、近くにある太陽と遠い恒星のどちらを基準にするかで生まれる違いである。3級は2級に比べて計算問題はあまり出題されないが、天文用語やその用法などについての設問が時折出題される。今回の場合、問34がそれに該当するが、例年、この種の問題は正答率が低い傾向にある。

【問50】世界に残る創世神話のうち、世界の始まりは卵のような形であったとしている神話はどれか(正答率23.2%)。正答は中国の神話。世界にはさまざまな創世神話があり、個性的でユニークな世界観を知れば知るほど、古代の人々の想像力には感心させられる。一方で、世界の最初は混沌とした状態であったというのが、世界中でお定まりである点もなんとも面白い。神話の魅力を伝える本は数多いのでぜひ一度手に取ってみていただきたい。

【問22】プロクシマ・ケンタウリ星のプロクシマの意味を問う問題(正答率24.5%)。この星が、3重星であること、太陽から最も近い恒星であることを覚えていれば、また、恒星の略称の付け方の規則性を理解していれば、選択肢が狭められていくだろう。

今回の試験では、全員正解となった問題が1問発生してしまった。受験者のみなさまにはお詫び申し上げます。

【問31】2021年12月25日に打ち上げが成功した宇宙望遠鏡の略称を問う問題は、テキストに未掲載であったため、全員正解とした。JWSTは1兆円以上をかけた一大プロジェクトで、その成果として2022年になってその撮像画像を見られるようになった。専門家の予想をしのぐ画像の鮮明さは、これから我々にどのような世界をみせてくれるのか楽しみである。

 

■2級
2級の出題問題の水準は、高校地学で学ぶレベルであり、この2、3年の合格率は約38%である。
今回の合格率48.7%は過去3番目に高いもので、第1回の56.4%に次ぐものとなった。受験者層は10代(23.8%)、20代(27.0%)で過半数を占め、50代(14.3%)、40代(12.6%)がそれに続く。合格率をみると、60代以上の層が5割を超えている(60代51.4%、70代62.5%、80代以上66.7%)。平均点は67.3点で、得点分布は70~79点が24.5%と最も厚かった。最高得点は96点で、意外にも2級試験では満点を獲った方はまだいない。

(第13回2級試験の合格率は、「過去2番目に高い」ではなく「3番目に高い」の誤りで、第6回の63.8%、第1回の56.4%に次ぐものでした。訂正してお詫び申し上げます。2022/10/26更新)

 

正答率が高かった問題をみてみよう。

【問1】宇宙の階層構造において、サイズの大きい順に並んでいるものを選ぶ問題(正答率95.7%)。混乱を招くような選択肢はない素直な問題であった。

【問10】図中に示される領域名を選ぶ問題(正答率94.3%)。図とは公式テキストに掲載されている「太陽系とグリーゼ581のハビタブルゾーンの比較図」。親星の質量に応じて、水が液体として存在できる領域を表したもので、ハビタブルゾーンを視覚的につかめるように作図されている。地球の位置が奇跡的なものであると感じさせる印象的な図でもあり、正答率も高かった。

【問7】写真の銀河のタイプを選ぶ問題(正答率93.2%)。公式テキスト掲載の「ハッブルの音叉型分類」の図を思い浮かべられれば、写真の銀河のタイプが分類できる。視覚的に銀河をおおまかに分類するというおなじみの図からの出題とあって正答率が高かった。

【問18】古い天体観測の記録の文献の抜粋からそれぞれどのような天体現象を表しているか正しい組み合わせを選ぶ問題(正答率90.4%)。文献はすべて漢字なので一見すると難しそうだが、歳星が木星を指すことと、客星が彗星や新星など突然現れた星を表すという知見があれば正答にたどり着ける。

【問2】太陽の黒点が、周囲の光球よりも低温になっている理由を問う問題(正答率90.0%)。これは強い磁場の影響で熱の輸送が妨げられているためで、黒点が生まれる原因とも関連して記憶されていれば、他の選択肢が誤りであることに気づくことができるだろう。

正答率が低かった問題は、【問54】さまざまな星のスペクトルの図から、486 nmの波長でみられる強い吸収線が何かを問う問題(正答率14.3%)。波長の長いものから順番に、Hα線、Hβ線、Hγ線、Hδ線と水素原子のつくる吸収線は目立つ。図でも左から順に縦に暗線が見て取れる。正答に辿り着くには、それぞれの波長が何nmかを把握している必要がある。

【問46】現在その温度がおよそ3 Kである宇宙背景放射のピークの波長はどの程度か問う問題(正答率23.0%)。そもそも宇宙背景放射とは、インフレーション宇宙の証拠ともいわれているもので、宇宙のどの方向からも同じ強度で届く電波のこと。あらゆるものはその温度に応じた光を放射しているが、かつての高温高密度の状態から、3Kまで冷えた現在の宇宙ではその波長は1㎜程度の電波として観測されている。

【問14】HR図から主系列星の光度Lは表面温度T のだいたい何乗に比例すると読み取ることができるか問う問題。ステファンボルツマンの法則(星の光度Lは、表面温度Tの4乗と表面積の積)から導くか、グラフに線を引いて概算から導くかによるが、日常で用いない桁数の大きな計算に戸惑った方が多かったようだ。

【問26】惑星状星雲などのスペクトル中に見つかった未知の輝線は、後にどのような理由による輝線であるとわかったか(正答率25.3%)。発見された当時に知られていた元素からの輝線では説明できなかったことから、未知の元素ネビュリウムを想像した先人たちの予想が外れたという科学史の知見を問う問題であった。

最後に、【問8】日本の律令制における陰陽寮の漏刻博士が何を担当していたかを問う問題。本問は公式テキストに漏刻博士の業務内容についての記述がなかったため、全員正解となった。受験された皆様にはお詫びを申し上げます。

 

■1級・準1級
1級受験者の特徴として長らく挙げられたものに、受験者の多数を男性が占めるというものがあるが、今回は女性受験者が3割を超え、徐々に女性の受験者が増えつつある感がある。1級の試験内容は大学の講義レベルで専門性が高く、過去11回の試験の平均合格率は約4%。大学院レベルほど難易度は高くないのだが、出題範囲が非常に広範かつ多岐にわたる。そのため、複数回挑戦されて時間をかけて合格された方もいらっしゃる。さて、今回の1級試験についても受験者層が厚いのは、40代以上であった(40代20.8%、50代23.4%、60代19.5%)。点数分布をみてみると、40~49点にピークがあった。今回の合格者を年齢別にみてみると、1級は50代が66.7%を占めている。準1級の合格者も40・50代(40代28.6%、50代28.6%)が多い。この傾向は例年通りであった。1級の平均点は47.7点であった。これは過去11回の試験のほぼ平均点でもある。

出題問題を見てみよう。正答率が8割を超えたものは3問。
【問2】陽子と中性子を繋ぎ止めて原子核をつくっている力を問う問題(正答率87.0%)。正答は「③強い力」。1級受験者にはやさしかったようで、正答率はさすがの87%と高かった。

【問35】8つの客星の記録が残されている日本の中世の文書を問う問題(正答率85.7%)。正答は藤原定家の日記『明月記』。かに星雲の超新星爆発に関する記述の精確さについては、『公式テキスト2級』でも取り上げている。現代に残る貴重な天文資料として名を馳せるだけに、こちらも高い正答率を記録した。

【問18】小惑星探査機「はやぶさ2」の現状について問う問題(正答率83.1%)。時事問題は1級試験問題で毎回数問出題される。正答は、「地球に帰還するカプセルを分離した後、新たなる探査に向かっている」で、まず2026年に2001 CC21をフライバイによる観測を行い、その後、2031年に小惑星1998 KY26にランデブーして近接探査を行う予定。時事問題対策としては、天文学や宇宙開発関連のニュースに耳目を開き情報収集に努めていただくほかない。

【問33】太陽系形成過程を表す4点の概念図から、雪線を境界とした構成分類の違いを問う問題(正答率83.1%)。『理科年表』にも掲載されているおなじみの図からの出題でもあり、比較的容易であったとみられる。

正答率が2割以下と低かった問題は、以下が挙げられる。
【問7】火星の衛星フォボスとダイモスの記述で誤っているものを問う問題(正答率13.0%)。NASAの探査計画でにわかに注目を集める火星の衛星であるが、ダイモスの方が先に発見されたという事実も、その他の知見もあまり知られていなかったようで、回答は見事に散ってしまい正答率が低くなった。

【問26】ある近接連星のロッシュポテンシャルと星の形状を表した図から、この近接連星が何型に分類されるかを問う問題(正答率11.7%)。ロッシュポテンシャルについては過去にも数問が出題されているが、その際の正答率を振り返ってみると本問がもっとも難易度が高かったようだ。1級は公式参考書として『極・宇宙を解く』が指定されており、本問もそこからの出題であった。出題問題のおよそ4割程度は参考書の記述を出題範囲としているので、理解が及ぶまでの読みこなしをして臨んでいただければと思う。

 

■総括
天文宇宙検定公式テキストには、われわれの住まう宇宙について、基礎的事実から最先端の知見まで散りばめてあるが、受検者のみなさんは公式テキストを楽しんでいただけているだろうか。文科省の指導要領に縛られた学校現場の教科書とは違って、面白くない内容は無理に載せていないし、新発見などは割と早くに掲載できるのが利点だと考えている。
さて、コロナ禍および年2回開催となって3年目に入ったが、受検者数は堅調で(というより1年あたりではかなり増加している)、合格率も数年単位でみれば全体的にやや増加傾向にあるようだ。受験者を選別するための入学試験と異なり、本検定は受検者のみなさん一人ひとりの“学び”を確かめてもらうための試験なので、合格率が少しでも上がると主催者側も嬉しい気持ちになる。とはいえ、1級合格者は相変わらず少ないが、これは致し方ない面もある。1級講評にもあるように、小中高(4級から2級)レベルに比べて、大学レベルの内容は格段に難易度が高くなるためだ。まず、宇宙“物理学”などがふんだんに必要になって質的に難しくなり、さらに扱う範囲が広く深くなって量的に膨大なものになる。とはいえ、1級参考書『極・宇宙を解く』は実際にいくつかの大学で教科書として使用しているものなので、1級や準1級に合格された方々は大学の天文専門課程を出たぐらいの力を付けられたということだ。1級に限らず、上のクラスへの挑戦を続けていただきたい。
最後に、総括とは少し話が逸れるが、検定委員会内部でここ数年議論になっているのが、<即応性>の問題である。公式テキストは2年ごとに改訂しているが、ということは、改訂後2年間の間に興味深い発見や知見があっても(1級を除き)出題できないわけである。とくに年2回開催となると、うち、3回ぐらいの試験で出題ロスが起こりうる。そのため、時事問題に限って、テキスト範囲外からの出題を認めるか、やはりテキスト範囲に限るかなどが議論されている。折衷案としては、HPなどで時事問題の解説をして出題範囲に含める方法もある(でも、ちょっと大変かも)。受験者のみなさんの忌憚ない意見をお聞かせ願えればありがたい。

2022年9月吉日
天文宇宙検定委員会